フォーミュラ
量産効果という価格低下現象がある。
例えばたった1台の受注で製造された製品には、そのためだけに製造設備や研究費、特注部品代などの開発予算を全てその1品の販売で利益としなくてはならない結果、なんだかんだで数億円の値段になるとしよう。
そして、その全く同じ製品を10台製造するとなった場合にはやはり1台ずつ数億円になってしまうだろうか? そうではなくなる。製造設備はそのまま使えるし、研究が済んでいて、特注部品というものは個数発注でで単価が下げられる。そうすると、1台なら数億円だったものが、10台でも十数億円に留まり、1台あたりが1億円前後の値段でも利益となるような状況になる。
そうしていくと、もし1000台なら1台が数千万円になり、数万台ともなれば色々な部分が標準化して、生産効率も向上し、1台数百万円くらいになる。さらには競合製品も現れると利益を削り合い、1台百数十万円くらいになって一般人がローンで買える製品ジャンルとなる。
こうして、本来であればフォーミュラカーのような販売価格だったパートノイドが、その普及計画によって、普通自動車の販売価格にまで下がり、今日こうして普及しているというわけだ。
自分の家に散歩を一緒にしてくれる嫁がいるというのはとてもいいものだ。
俺の住むアパートのすぐ向かいには、庭がちょっと和風になっているくらいの大きめな家に、老夫婦が住んでいる。だけど少し前に旦那さんが長期入院となったそうで、お婆さんは杖を突きながら掃き掃除をしたり、曜日のゴミ出しの回収小屋で大変そうなのを俺が手伝ったのをきっかけに世間話をするようになった。俺がトゥルミナを迎えたのとどっちが先なのか分からない頃に、散歩で出会った時にはF社製の男性パートノイドを連れていた。
「ご主人とご一緒だった頃の散歩みたいですね。息子さんに変わったみたいです。」
「病院でね、お父さんを介護してくれるパートノイドを見て、ワタシも欲しいなって思っちゃったのよ。介護相談員さんにすぐ相談しちゃったわ。」
杖が要らなくなるだけでなく、突発的に何があっても、パートノイドと一緒なら安心だね。「ツエ」と名付けられたらしい男性パートノイドが、手をつなぐだけでなく時々お婆さんを抱え上げるようにして、散歩道を歩いて行った。
「俺たちもああなりたいな。なれると思う? トゥルミナ。」
「素敵なお婆さまだわね。ダーリンもあんな感じの将来がお好きですか?」
まずは手つなぎだ。あの2人のように、そうして街に溶け込んでいこう。
「それでしたら、ダーリンが入院された時にはF社の男性パートノイドをご購入する、というご予定に備えた貯蓄プランですね。B銀行なら月々のお支払いは1万円から20万円まで設定できます。ミナとF社製男性パートノイドで、きちんと手を繋いで散歩しますわね。安心してお任せください。」
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