目覚め
何かが始まるかも知れない
何も始まらないかも知れない
そんな、まだ…始まる前の物語
20XX年─某都内のオフィスの一画。
「また、無茶で無謀にも感じる無理な要求か? いや、これは前にも断りを入れた案件じゃなかったか? 何でまた、こうやって来てるんだ? 俺に回せば何とか済むとか思われてるって、いう事なのか?」
はぁ…。
溜め息を吐いている男の見た目は、凡そは20代後半に見えるだろうか?
だが、そのやつれた顔や窪んだ目の周り等、全体を切り取って見る限りは印象はもっと歳をとって見えそうでもあった。
今現在も溜め息から後は、その疲れ切った背中からも感じられるであろう絶望へと近い言葉を、吐き出し続けている男が居た。
「本当─いや、本当に運が無いというか。現実はどこまで行っても、ままならないものだな。神様とかなんて居るのか? 救いとかあるのか? あぁ、本当に嫌だ嫌だ」
きっと、それは男の机だろう。
その上には未だに無造作に処理中だろう仕事の書類が山積みになっており、今現在…新たに生まれた仕事の書類が、その存在を示すように山がの上へと築かれていっていた。
(俺は…どこで間違ったんだろうな?)
いや、人生に間違いなんて無い。
─とは言い切れない自分が居るらしい。
見合った給金、困らない生活。
そうだ。
望む人が見れば、当然羨む環境でもあるのだ。
しかし、今にとって、この状況は男にとっては、ただの自由の無い生活にしかなく、大きな過ちを犯してしまったかのように感じるくらい、苦しい状況でもあった。
(結構、俺は頑張って生きてきたし、良く考えて最善を選んでは、頑張っているとは思うんだけれどなぁ…)
そう、思考も強張った筋肉も弛緩しつつ、男は視界を未だに深夜を回っても明るく照らす眼下の街へと移す。
「いや、本当に上手く──俺は頑張って来れていたのか?」
そして、いつもと同じように、まるで儀式の様にもなってしまっていた、自身の境遇への自問自答へと男は陥ってしまっていた。
(はぁ─どうして、毎回毎回飽きもせずに悩んでしまうのかね?)
本当に嫌になってしまうものだ。
こんなに悩んでいたら、飽きが来ても可笑しくはないはずなのだ。
自分自身の思考回路の気難しい癖に、自身でいちゃもんを付けつつ、男は自分にとっての都合の良い答えを無理やりにでも当て嵌めて行っては感情を落ち着かせていった。
だが─。
……
…
「あぁ─でも、やっぱりダメなもんは、ダメだ!」
男は自身の頭を左右に振り乱れて、それを合図にでは無いが、取り留めのない思考の渦へと埋もれていってしまった。
(どうして、こうなっちまったんだろうな?)
(本当は─俺は、どうなりたかったのだろうか?)
何度も繰り返されて来た自問自答─そして、いつも通りに男は過去を振り返り始めていたのだった。




