Prologue
この物語の終着点は未だ何処になるのかは
─まだ、誰にも分からない。
だが、常に選択は目の前に有り、その選択の結果の果てに、終着点は生まれているのであろう。
ここではない何処か。
全ての存在が、きっと感知出来ない程に遠い場所。
そして、きっと世界というものを管理する者にとっては程近い場所。
「もう…持たない─」
女性の声が何もない空白─それはまるで、白の空間に一人悲しく、響くこと無く消えていっていた。
反響する存在すらないせいであろう。
きっと、元は透き通るような彼女の声なのだろうが…今は、か細く弱りきった彼女の声は何者にも届くことは無く消え失せていっていた。
「せめて……私の意識がある内に──」
白い空間の中で、彼女はそうは言ったが今現在─それは難しい事であろう事は、必死に周囲へと視線を転じさせた彼女と同じ箇所を見れたのならば、自ずと分かってしまっただろう。
(もう─あんなに黒く…)
彼女の視界が捉えているのは、この白の空間の終わりの部分なのだろうか?
─その端から、まるで浸食するように淀んでいく黒い存在が見えていた。
「私が私で居られるうちに─」
彼女はそう言いつつ、自身の何とか未だに動かす事が出来た片方の手を、おもむろに空間へと翳していく。
(くっ……)
しかし、彼女の両手は先程まで、黒い空間を今か今かと浸食しようとする存在を防ぐ為に使っていたようだった。
その両手の内の、何とか動かせた片手を自由にしたのだ。
抑えられていた黒い存在の彼女の白の空間を浸食するスピードが、また一段と上がった様に思えた。
「これで…少しは─私が、例え壊れてしまっても…暫くは持つはず─」
(─どうか、お願い…どうか、どうか─世界に少しだけでも安寧を…)
彼女の最期の願いに応じてだろうか?
その彼女の掌から白銀の光と…いくつかの色の光が生まれては、彼女の掌から世界へと零れ落ちていっていた。
そうして、掌からの光を見届けた彼女は、それがきっと最期の抵抗だったのだろう。
黒い存在の浸食するスピードが加速度的に上がっていき、あっという間に白い空間を…彼女をも含め、浸食したのだった。




