3章第4話:『チョロい女』
10分休みが終わり二限目の授業が始まった。しかし一ノ瀬はずっと暗い顔をしていた。授業が始まってもずっと机に突っ伏しながら小さな声で唸っていた。
「うぅ………」
「おい、A。一ノ瀬さんに何したんだよ」
その姿をみて後ろの席の神田がAに話しかける。
「俺は何もしてねーよ、あいつが勝手に自爆しただけだ」
Aは神田に無罪を主張するが神田はさっきの事情を知らないため理解できずに不思議そうな顔をした。
「でも以外だな。お前みたいなロリコンにあんな可愛い彼女がいたなんて」
「……っ!」
何げなく神田がAと一ノ瀬の関係性について触れる。神田のいった彼女という言葉に一ノ瀬が少し反応して顔が少し上がる。
「別に一ノ瀬とはそういう関係じゃねーよ、勝手にあいつが勘違いしてただけだ」
「そうなのか?でも気をつけた方がいいぜ」
「なにをだよ」
「そりゃもちろん一ノ瀬さんは男子、女子にも人気だからな。悲しませるようなことしたらたぶん殺されるぞA」
「怖すぎだろ、ていうかあいつならすぐに目覚まして俺のことなんてどうとも思わなくなるだろ。昔の約束に感情が引っ張られてるだけだ」
「そうかねぇ、俺はそう思わないけど」
神田はそう言い捨てて顔を机に置いて寝た。
「なんだあいつ、ラブコメ漫画の恋愛慣れてるキャラみたいなこと言いやがって」
その後授業が終わり休み時間に入る。しかし授業が終わっても一ノ瀬は沈んだままだった。
(めんどくせ〜、絶対これ俺がなんとかしないとみんなに文句言われるよなぁ)
Aは渋々席を立って隣の一ノ瀬の肩を叩いた。すると一ノ瀬は少しずつ顔を上げて暗い顔でAを見た。
「そろそろ普通に戻ってくれ」
「無理だよ……だってあんなこと聞かれたら……あぁ、こんな思いをするなら花や草に生まれたかった……」
「ポエム綴ってないで準備してくれ、次は移動教室だぞ」
席から動かない一ノ瀬の腰を持って無理やり立ち上がらせる。
「無理、もう私はここでお花になるんだ……」
「バカなこと言わないでくれ…、昔の約束忘れたことは悪いと思ってるし」
「……別にいいよ、昔のことだもんね。しょうがないよ」
一ノ瀬が諦めたようなそんな少し悲しげな顔をする。その表情に対してAはばつの悪い顔をした。
「でもなんで俺なんだよ、一ノ瀬なら他の男なんて選び放題だろ。約束を大事にしてるのはわかるけど囚われすぎじゃないか?」
「確かにそうかもしれないけど私にとってはすっごく大事な約束なの」
一ノ瀬がAをしっかりと見つめる。その顔は何かを決意しているような真っ直ぐな眼差しを宿している。
「それに私は男の人を選び放題なんてことないよ、好きな人1人すら落とせないし」
「そうか?一ノ瀬は可愛いしモテそうだけどな」
「え?A君今なんて言った?」
「あ?可愛いしモテそうだって」
「私が?」
「一ノ瀬が」
すると一ノ瀬が頬を突然つねり出す。その行動にAが何してんだという表情で一ノ瀬をみる。一ノ瀬は頬つねったことで苦い顔をしていて痛そうだ。
「痛い……ってことは夢じゃ、ない?」
「どういうこと……?」
「えーっ!可愛いだって、可愛い!A君私のことそんな風に思ってくれてたんだっ!」
一ノ瀬はさっきまでの沈んだ雰囲気とは打って変わってるんるんで立ち上がった。
「じゃっ、行こ!A君、移動教室遅れちゃうよ?」
「なんださっきまで暗かったのに急にどうした」
さっきとは真逆に一ノ瀬がAを引っ張って連れて行く。Aが思考を放棄しかけているとフィオーレが出てきた。
『Aは乙女心がわかってないね〜、今百華はAに可愛いっていわれて機嫌を直したのさ』
「え、チョロ……」
「ん?A君なんか言った?」
「いや……なんでもないっす…」
「そっか!じゃあ善は急げだー!」




