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らけんばるらりでゅーさ・かるさんぽく・たいげめ  作者: chiroru
学園の国 ルクテリオ

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第11章 記録

ユンは女子寮の廊下を歩いていた。


窓から入る光はいつもと同じなのに、空気だけが少し重い。

今朝、リコから聞いた話が頭から離れなかった。


部屋の前で足を止める。


軽くノックをする。


「……いいか?」


中からリコの声が返ってきた。


「うん、大丈夫」


扉を開けると、リコとリアナがベッドの前に座っていた。

リアナは本を開いているが、視線があまり動いていない。


ユンは二人の様子を見て、少しだけ眉を寄せた。


「体調は?」


リアナが顔を上げる。


「大丈夫。ちょっと寝不足なだけ」


「昨日、よく眠れた?」


一瞬だけ間があった。


「……うん」


リコが横から言う。


「寝てたよ。私が戻った時もずっと寝てた」


ユンは静かに頷いた。


「昨夜の話、もう一度聞かせてほしい」


リコの表情が少しだけ硬くなる。


「……うん」


椅子に座り直して、ゆっくり話し始めた。


「自習室に行こうと思って部屋出たんだけど、ノート忘れて戻ったの」


「その時?」


「窓のところに人がいた」


ユンの目が細くなる。


「入ってきていたのか?」


「いや、出て行ったよ。顔は見えなかった。すぐ飛び降りて逃げたから」


「リアナは?」


「寝てた。全然気づいてなかった」


リアナが小さく笑う。


「だから言ったじゃん、気のせいだって」


リコは首を横に振った。


「気のせいじゃない。絶対いたよ」


ユンは少しだけ考え込む。


「寮に侵入できる人間は限られる」


「鍵はかけてなかったの?」


「かけてなかった……」


リコが小さく答える。


ユンはそれ以上責めなかった。


部屋の中を見回す。


机、棚、ベッド。


特に荒らされた様子はない。


だが視線を下げた時、つま先に何かが当たった。


小さな音がした。


「……?」


足元を見る。


ベッドの下から少しだけはみ出しているノート。


ユンはしゃがんで拾い上げた。


「これ、どっちのだ?」


リコが首を傾げる。


「私じゃないよ」


リアナも首を振る。


「私のじゃない」


ユンの指が止まる。


表紙をめくる。


中には細かい字がびっしり書かれていた。


図式。


式。


ノウスの流れ。


臨界演術の文字。


ユンの目が一瞬で変わる。


「……これ」


ページをめくる指が早まる。


走り書きの文字。


仮説。


条件。


観測結果。


ニーナの声が頭の中に蘇る。


──精神状態も関係あるかもしれない


次のページ。


そこに書かれていた。


『仮説:臨界演術の発動条件は極限状態』

『感情の昂りが必要』

『人間が最も昂るのは死の直前』


ユンの呼吸が止まる。


『一例目』


『死に直面させたが発動せず』


『死亡』


『仮説修正』


『電撃による心拍異常を誘発』


『致命傷として認識されない可能性』


ユンの手がわずかに震えた。


─────────


ユンは最後のページまで読み終え、静かにノートを閉じた。

そこに書かれていた内容は明らかだった。


臨界演術の発動条件。

精神状態。

死に近づける行為。

そして――


『一例目 死に近づけるつもりだった』


『発動せず死亡』


記録だ。


リアナが不安そうに覗き込む。


「……何書いてあったの?」


ユンは一瞬だけ考えた。


そして、表情を崩さず言った。


「演術の基本情報をまとめたノートだ」


リコが首を傾げる。


「基本情報?」


「臨界演術の仕組みとか、発動条件の一般論」


リアナが少し身を乗り出す。


「誰の?」


ユンは肩をすくめる。


「リアナのだ。講義内容のまとめだと思う」


リアナは拍子抜けした顔になる。


「え?わたしの?」


リコもほっとする。


「びっくりした」


ユンは続ける。


「でも内容は悪くない。参考になる」


ノートを閉じる。


「少し借りてもいいか」


リアナが頷く。


「まあ、いいよ」


リコも気にしていない。


「あとで返してね」

「もちろん」


ユンはノートを持ったまま立ち上がる。


「また後で」


部屋を出る。


扉が閉まる。


廊下に出た瞬間、ユンの表情が変わった。

完全に実験記録だ。


そして。


(昨夜ここに来た理由も説明がつく)


リアナは標的だった。


ユンはノートを強く握る。


中庭へ向かった。


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