だい、さんわ『生じる違和感』
正直なところ落胆を隠しざるを得ない。おれはいつもの通り登校し、いつもの通り席に着き、いつもの通り隣にある赤木の席に悪戯をして、赤木の登校を待っていた。だがおかしい、赤木は基本的に登校が早いのだ。
最初は高揚を隠せずにいたおれが遠足の日よろしく早起きしてしまっただけなのかと思ったが、既に登校時間ぎりぎりなのである。着いた時にはすっからかんだった教室も今は賑やかに話すクラスメートで溢れている。しかし、赤木が居ない。
おいおい超能力バトルはどうしたんだ、昨日約束したじゃないか。いきなりすっぽかすつもりなのか。内心かなり焦り始めていた、超能力に目覚めてしまったから謎の組織が赤木を拉致したとかじゃないだろうな。でもだとすると何故赤木なのか。
先生はまだ来ないのか、早く詳しく教えろ。
待っているとついにキーンコーンカーンコーン、とチャイムが鳴り始めた。そして赤木の出席を諦めようとした時、二度目のチャイムに紛れタタタタ、と廊下を走る音が聞こえた。期待を隠せずに扉をじっと見つめる。
そして三度のチャイムの途中でドアが思いっきり開かれた。
「遅れました!......あ、まだ先生居ない」
息を荒らげながら、マスクをして顔が若干赤い赤木がズカズカとおれの近くに寄ってくる。いや正確には自分の席に座ろうとしているのだろう。
「な、なんだよ」
「おはよう」
「は?あ、ああ。おはよう?」
「うむ」
クラス全体呆然、おれも呆然。
とりあえずお前らはおれを見るんじゃねえ......。
「な、なぁ、今日どうした?」
「どうしたって、何が?」
「いや、いつもより遅れて来たから」
そう言うと赤木は一瞬俺から気まずそうに目を逸らす。あれ、聞いちゃまずかったかな。せっかく来たのに気まずさが理由で超能力バトルが出来ないなんて最悪だぞ。
「あー、親が珍しく早く起きてて、タイミング悪く微熱があったから」
なるほどさっぱり分からん。が、顔が赤い理由とマスクをつけている理由は何となく分かった。
「って、それ学校来て大丈夫なのか?」
「大丈夫大丈夫、大したこと無い。それに、約束してたでしょ?」
「そりゃそうだけど......そんな状態の奴に超能力バトルは無理だろ」
「えーっ、じゃあ私は何の為に来たんだよー」
「......まぁ、今日は超能力バトルは無しで、勝敗は決めず詳細だけを決定しよう」なんつってなプフフ。
「いやつまらないよそのギャグ」
「......」
「ま、仕方ない。今日は無理しないようにしとこっと」
「それが良い」
区切りがついたのを見計らったように先生が教室に入ってくる。クラスのみんなに遅いと咎められている辺り流石天然教師と言ったところか。
「みんなごめーん、甘々コーヒー飲んでたらちょっと過ぎちゃった」
ふざけんなー、真面目にやれー、とたくさん声があがるものの、どれも本気ではない。天然だから何か許しちゃう、みんなそう思っていることだろう。もっともおれと赤木はその性格に裏があるように思えてならない。なんつーか、あざといんだよな。
そして、自分の名前が上がったことに反応するように赤木が小声で話しかけてくる。
「やっぱ何だか怪しいよねー、演技臭いって言うかさ」
「そうだな......何か裏がある」
「ねね、じゃあさ」
「あぁ?」
「超能力バトルの埋め合わせと言っては何だけど、川波先生の裏の顔暴いてみない?」
出た、意地悪そうな笑顔。埋め合わせってかただ個人的に楽しみたいだけだろお前は。が、確かにやってはみたい。それに、俺の能力があれば難しくないはずだ。
「よし、やるか」
「お、乗り気だねー期待の新人くん」
「うるせ。とりあえず最初は昼休みからだな」
「おっけ、でもあたし一応病人だから無理はしないでね?」
「分かってるっての」
ふー、正直滅茶苦茶楽しみだぜ。




