だい、よんわ『偶然の発覚』
まず赤木探偵団がしたことは、二時限目の後の休み時間にて行われた。いつもの通り屋上の階段の踊り場へ行き、着いたところで赤木がこう言ってくる。
「ねぇ、超能力見せてよ」
「はぁ?何だ唐突に」
「いやね、作戦的にどんな能力か見たいじゃん?」
「この前電話で言っただろ」
「どんな感じになるか見たいの!ねぇお願い!」
「まぁ、良いけど。じゃあおれのズボンで試すか」
軽く下ネタをふってみる、特に理由は無いし反省もしないぞ!真顔の後、下種を見つめるような冷たい視線を送ってきた。
いやこれ冗談じゃん......。
「嘘だって!じゃあ、そうだな......まぁ俺自身で良いか」
深呼吸し息を整え、手を開いたり握ったりを繰り返す。
「とくと見やがれ!おれの能力、『永遠なる透明』をなぁ!」
「うるさいし名前ださい」
「出鼻をくじくな!よし行くぞ!」
目を閉じながら心で能力名を唱えて、最高の瞬間に目を見開く────!
「うわっ消えた!すごーい!どこどこ!?」
「こっちこっち」
「どこー!すげー!」
「おーい、おーい?あれ?」
「あははー!かっこいいー!」
「聞こえてますかー!ここだよー!」
「どこだー!黙ってないで出てこーい!」
......ん?喋ってるだろ。一回解除しよう。
「こっちだ間抜け」
全く別の方向を向きキョロキョロしていた赤木の後ろに立ち、不意打ちで軽くチョップを後頭部に当てる。
「あいたっ!二つの意味でいたっ!」
「見つけられないとは間抜けめ......クク」
「喋んないのは反則じゃーん!『俺の後ろに立つんじゃねえ......』って言いながら裏拳してみたかった」
「訳の分からない発言と恐ろしい発言を一気にするな、混乱しちゃうだろ。おれは喋ってたぞ」
「えー、聞こえなかったけど。あと服も消えてなかったよ」
ふむ......確かに俺も自分の手を見ていたが透明になることはなかった。赤木が言った通り服も消えていなかった。
あれ?もしかしてこれ透明人間になれる能力とかじゃないの?
「な、なぁ赤木」
「貴方達、何をしているの?」
「「......っ!?」」
すごい勢いで赤木と共に踊り場の下から聞こえた声の方向へ振り向く。まずい、見られたか......!?
「まさか、不純異性交遊じゃないでしょうね?」
そんな一言と共に階段をカツカツと上がってくるのは、おれ達のクラスの委員長、岡山さんだった。
「大きな声が聞こえたから来てみたけれど、何をしていたの?廊下に丸聞こえだったわよ」
その言葉と同時に赤木を睨み付ける。赤木も気にしたのかおれを方を向いていたが、おれと目が合った途端気まずそうに、且つ素早くおれの視線から逃れた。
「ねぇ、聞いてるの?」
「あ、ああ。なんつーか、うん、教室だと話しにくいって言って、ここまで来て相談聞いてた。うん。それだけ。何もないよ。告白かと期待した俺が馬鹿だったーあははー」
「なっ!?」
赤木が明らかに驚いて弁解をしようとしたが、その言い訳の方が色々都合が良いことを悟り口をモゴモゴさせながら押し黙る。
「ふぅん......?まぁ良いけれど。そろそろ三時限目始まるわよ」
「あ、もうそんな時間か。岡山さん、ちょっと試したいことがあるから赤木の隣に来てくれ」
「また赤木って......夏美でしょ」
「分かった分かった、後で話すからちょっと黙っておれ」
「試したいことって何?まさか3P?嫌よ!」
「全く違ぇよ!立ってるだけで良いから早くしてくれ!時間無いんだろ!?」
しぶしぶと言った感じに赤木の隣に移動する。よし、能力がどんなものがはっきりさせよう。これが正しければ、大きな一歩となるはずだ。
目を閉じ、深呼吸で息を整える。
「え?今やるの?岡山さん居るよ!?」
「大丈夫だ、バレたらバレたでしょうがない、その時はその時だ」
「で、でも......」
「なに?何の話をしているの?」
「だーっ!一回二人とも黙ってくれ!集中出来ない!」
再び心を落ち着かせる。『対象者』は......赤木一人だ。
よし、行くぞ......今だ!精神統一が終わり一気に目を開いた。
「わっ......これバレたじゃん......どーすんのよ......」
「......?なに?いきなり目を見開いて」
「気にしないで、今実験中だから」
「ふぅん......?」
やっぱりな、分かったぞ。恐らくこれは赤木と二人だけじゃ気づかなかっただろう、岡山さんに感謝だ。
これは『透明人間になる能力』じゃない。これは、『存在を気づかせない能力』だ。
それはそうと赤木がパニクっている。何故岡山さんがおれを見れているのか、そういうことだろう。とりあえず能力を解除した。
「岡山さん、終わった。先に行っててくれ」
「......?変な人達ね......。授業開始までには来なさいよ」
「へーい」
おれを視認出来るようになり、階段を降りていく岡山さんとおれを交互に見ている赤木が何だか面白くて笑う。すると赤木は俺だけを見据え睨み、ズカズカとこちらに近付いて来て連続をチョップをかましてきた。
それから逃げるように階段を駆け下り、廊下に着地した瞬間に授業開始を知らせるチャイムが鳴り始める。やばい、急がなきゃ。
「で、どういうこと?」
三時限目が終わった直後にこれである。教科書を入れ替えつつ、意味はないがとりあえずすっとぼけてみた。
「何が」
「お前の能力に決まってんだろー!あといつまでも夏美と呼ばない件についてだー!」
「あぁ。結論から言うとおれの能力な、透明人間になる能力じゃなかった」
「え?」
「どうやら存在を消すとか、存在を意識させないようにする能力らしい」
「何が違うの?」
「おれが思っていた透明人間は、正真正銘、体を透明化させて姿を消せるが物理的な干渉が出来る、そんな感じだ。そこは分かるな?」
「うん」
「だがおれの能力は、実際透明にはならない。他人の意識下に何らかの干渉をして、視覚情報や聴覚情報などの中からおれとおれに触れたものの存在を消せるんじゃないかと思ってる。ただし能力発動前に存在が認識されていたり、存在が消える状況に無理があれば姿は見えないものの存在を知られてしまう」
「ふむふむ」
「岡山さんがおれのこと見えてたろ?あれから考えるに、能力の影響を与える対象者をある程度選べるみたいだ。岡山さんはおれの能力を知らないからお前だけに使った」
「なるほどねー、あたしそれで若干疎外感を感じたけど」
「それについてはごめん。んで話続けると、例えば今お前に能力を使ってお前のパイオツ揉んでも、俺の存在が近くにあるのは分かるけどパイオツ揉まれてるのは気付けない、つまりそういうこと」
「それ透明人間よりエロじゃん!」
唐突過ぎるその発言でクラス全体が凍った。クラス全体の視線がおれ達へと向けられる。その中には岡山さんからの視線もあり、何とも耐え難い空気だ。言った張本人も俯きながら顔真っ赤にしてマスクの上から手を当て口を隠している、マスクで充分だろといったつっこみは野暮である。
にしてもこりゃひでえ、今日一日でどんどんおれと赤木の印象がマイナスに近づいていく。どうしたもんかな。




