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男は理に修める体もつ物  作者: 迷烏
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捜索、あるいは発見

あなたのものは直せない。能矢さんは確かにそう言った。

あの能矢に直せないものって……

「そんなことを言わないでください! 貴方はどんなものでも治せると聞いたのですから」

「あなたは捉え方が違うんだよ。ボクは獣医じゃないんだから、動物の病気は治せないよ」

あぁ、そうか。

四枝先生が治してほしいのは、動物の病気。物体を直せる能矢さんも、病気は治せないということか。

「それに……」

次に、能矢さんが言った言葉に…



「正直どうなろうと、ボクには関係ないんだ。」



『!?』

「……」

鈴名さんを除いた私たち三人は声を失った。

「分かったなら、さっさと獣医にソレを連れて行った方が…」

その時、

「いたーーーーーー!!」

大声が辺りに響いた。

全員がそちら向くと、そこに居たのは、

「と、トキちゃん?」

トキちゃんがこちらへと走ってきた。

「四枝先生! たいへんで……クッシン?」

私に気付いたトキちゃんは止まった。

「麻間さん見つかった?」

「う、うん。そこに居るけど」

「そっかそっか〜」

「トキちゃんこそどうしたの? 確か部活だったんじゃ…」

「あー! そうだ! 四枝先生! たいへんですよ!」

「どうしたの森岡さん?」

「今先生の家から電話があって、コノハちゃんが逃げ出したって!」

「!?」

先生の顔が驚きで固まった。

話の流れ的に、コノハちゃんとは先生が飼っている、病気の動物かもしれない。

それが、逃げ出した?

「……猫らしいね」

能矢さんが呟いた。コノハちゃんって猫なのか。

「猫は死に際を人にあまり見せだからない動物だ。きっとそれは、死に場所を探しに行ったんだよ」

「能矢!!」

鈴名さんが怒鳴った。先生の目の前でその言葉は苦痛だ。

「事実でしょ?」

「くっ……」

「今は争ってる場合じゃないよ! 鈴名さんも能矢さんも手伝って!」

「手伝ってって、なにを?」

「コノハちゃん探しを!」



という訳で、私たちは三組に別れて先生の飼い猫、コノハちゃん探しを開始した。

組み合わせは麻間さん達、トキちゃんと四枝先生、そして私と木山さんだ。

「いったいどこに行ったんでしょう?」

「うーん……」

麻間さん達探しの次は猫のコノハちゃん探し。さっきみたいに声が聞こえてくる訳無いから難易度は上がっている。

特徴は四枝先生に聞いたので分かっている。白と茶のぶちで、名前の由来になった葉っぱ型のぶちが頭の上にあるらしい。

でもぶち猫って結構多い、その中からコノハちゃんを見つけるとなると……

「手当たり次第探すしかないね」

「はい」

坪の上、路地の中、上から下まで目を皿のようにして木山さんと2人して見渡す。そうすると猫はいっぱい見つかるけど、全部コノハちゃんではなかった。

そのまま一時間が過ぎ、私たちは一度集まる事にした。

集合場所に行くと、麻間さん達がすでに来ていた。

「どうだった?」

「見つかりませんでした」

「こっちもよ、壊れた物ならすぐ見つかるんだけど」

きっとトキちゃん達も……

「あ、あの」

その時、木山さんが能矢さんに声をかけた。

「何?」

「わ、わたしのぬいぐるみを直して下さったのって能矢さんなんですよね? そのお礼が言いたくて。ありがとうございます」

「別に、壊れた物をほおっておけなかっただけだよ」

そっけなく能矢さんは応える。

「こら能矢。お礼言われてるのになんて態度なの」

「い、いいんですよ」

「全く、逃げ出したんだからわざわざ探さなくたって良いじゃないか」

能矢さんは近くにあったベンチに座って愚痴のように呟いた。

「わざわざ見せたく無い姿を隠すために逃げたんだ。飼い主だってそんな姿を見たくはないはずなのに。どうしてここまで探すのか、僕には分からないね」

「……それは」

ふと、私の頭の中に言葉が留まった。そして無意識の内に、その言葉を口にしていた。

「きっと、ちゃんとお別れがしたいからですよ……何も言わずにお別れなんて、寂しすぎますから……」

まるで、能矢さんの言葉に応えるかのような言葉。

「……」

それを聞いた能矢さんは、

「…………へぇ、君は随分変わってるね」

うっすらと、普通に見たら分からないぐらい少しだけ笑った。

「ちゃんと別れたい、か。どうせいつかは離ればなれになるのに。いや、なるから、別れはちゃんとしたいって事かな?」

「え、え?」

「ものはいずれ壊れる。けど僕はそれを否定する。けれど、ものとは必ず別れがくる。……それはさすがに否定出来ないかな……」

能矢さんは何か思い出したように遠い目をした。

「能矢……」

鈴名さんも何か言いたげだ。

今の言葉に、何か思い入れがあるのだろうか……

その時、携帯が鳴った。

発信者はトキちゃんだ。そういえばまだ集合場所に来ていない。

「もしもし?」

『もしもしクッシン!? 見つけたよ!』

見つけた?

「見つけたって、コノハちゃんを?」

『そう! でも大変なの! 早く来て!』

「え!? た、大変ってどういうこと!?」

『いいから早く来て! 河川敷のところだから!』

それで通話が切れた。

「……」

かなり大変そうだった。コレは急がないと!

「森岡さんなんだって?」

「コノハちゃんを発見したけど、大変な状況だって……」

「なら早く行きましょ。場所は?」

「トキちゃんは河川敷って言ってました。こっちです」

私達はその場を離れ、河川敷へと向かった。


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