年下あるいは、年上
結局あの後、鞄とぬいぐるみが修理されて戻って来た。
鞄は新品のようにほつれていたところが無くなり、ぬいぐるみは無かった筈の手が同じ柄の布で新しく付けられていた。
その鞄にぬいぐるみを入れて、私は今トキちゃんと一緒に昼御飯を食べていた。
「むぅー、良い考えだと思ったんだけどな〜」
ストローを加えてぶくぶくと紙パックジュースを音立てるトキちゃん。
結局、物を修理した事によりカウントが増えて、麻間さん達の移動を早めただけだったのだ。
後トキちゃん。それは行儀悪いよ。
「あ、あの……」
「クッシン〜何か良いアイデア無〜い?」
「そんなこと言われても」
「あ、あのぅ……」
「あ、それおいしそ、一口も〜らい」
「ちょっとトキちゃん、行儀悪いよ」
「あのぅ…………」
「むぐむぐ、うん。おいしいねそれ」
「もー、トキちゃんったら……」
「あ、あの!」
「?」
呼ばれた声に振り返った。そこに居たのは、
「あ、きゅ、急に大きな声出してすみません。あ、あの、わたし、昨日ぬいぐるみを渡した者なんですけど、あの、その……」
あわあわと慌てる女の子が立っていた。ぬいぐるみを渡したって、あぁ、あの直された腕の無かったぬいぐるみの。
「確か……一年生の」
「はは、はい。木山美都琉といいます」
ぺこんと頭を下げた木山さん。髪をみつあみに結んで眼鏡をかけている。何だか大人しそうな雰囲気だな。
「おぉ〜、なんか2人は似てるね」
「え? 似てる?」
「うん、かな〜りね」
かなーり……
木山さんを見てみる。別に私は眼鏡をかけてないし、髪も全然違う。
……どこが似てるんだろ?
「あ、あのぅ、話を戻して良いですか?」
「あ、はい、どうぞ」
木山さんは肩にかけていたから鞄からある物を取り出した。
「昨日渡したぬいぐるみの取れた腕を渡し忘れてしまいまして」
ぬいぐるみの腕、でも確かアレは……
「コレだよね?」
トキちゃんが私の鞄の中から直されたぬいぐるみを取り出して机の上に置いた。取れていた筈の腕も、能矢の手によってちゃんとくっついている。
「え! で、でも腕はわたしが持ってて…」
「コレぐらい朝飯前さ!」
親指を立てて誇らしげなトキちゃん。直したのは能矢さんなのに。
「まぁ昼御飯食べてるけどね!」
えぇー……
「は、はあ……」
木山さんもきょとんとしている。
「え、えっと……直して下さって、ありがとうございます」
ぬいぐるみを受け取ってぺこんと頭を下げた。
「いやいや、直したのあたし達じゃないから」
そう、直したのは私達じゃない。
「で、では、その直した方はどちらに?」
「ん〜……まだこの街にはいると思うけど」
「ぜ、ぜひお礼を言いたいのですが」
「良いとも!」
ビシッ! と親指を立ててトキちゃんは宣言した。
「そうと決まったら放課後に……あ!」
けど次の瞬間に思い出し、
「しまった〜今日は部活あったんだった」
親指を立てたまま手を動かして、
「という訳でクッシン! キミに任せた!」
ビシッ! と私を指さした……って、
「え、えぇー!?」
「す、すみません先輩。わたしの為にわざわざ……」
「大丈夫だよ、特に用事も無かったし」
帰宅部だからトキちゃんみたいな事にもならないしね。
という訳で、木山さんと共に麻間さん達を探して歩いていた。
今は商店街を散策中だ。どこに居るのかという目安は無いので、歩いて探すしかない。
強いて言えば、何か壊れている物があるところだろうけど…
「お願いします!」
大きな声が聞こえた。何だか聞き覚えのある声のような、
「すみませんが、そればかりは出来ません」
続けて声、それにはもっと聞き覚えがあった。つい先日聞いたばかりだから。
「あっちかも」
私達は声がした方向に向かった。すると予想通りの人と、予想外の人が一緒にいた。
「すみません。他を当たっていただけますか?」
片方は鈴名さん。いつもの肩掛け鞄が何故か無いけどそれ以外は普通だ。何かを断っているようだけど。
「そこをなんとか! ようやく見つけた最後の希望なんですよ!」
声を荒げていたのは、なんと…
「よ、四枝先生?」
「え?」
木山さんがその名前を呼んだ。
さらりとした長い黒髪の女の人。四枝先生、私達の通う学校の先生だった。
「木山さん……隣は確か二年生の……」
四枝先生は私を思いだそうとしているけど、きっと難しい。何故なら私は先生から授業を習った事が無いからだ。
先生の担当は音楽、けど私は美術を選択しているから顔を合わせる機会が少ない、先生が全生徒を、生徒が全先生の名前を知っているのもそうは無いだろうから。私が名前を知っていたのは、先生がトキちゃんの所属してるバレーボール部の顧問をしているのを聞いていたからだ。
そして確か一年生の担任もしていた筈だ。木山さんを分かったのは担当しているクラスの生徒だからだろう。
結局、四枝先生は私の名前を思い出せなかった。
「あら、噺さん」
鈴名さんが私の名字を呼んだ。良かった、本当にクッシンと呼ばれると思ってたから。
「こんにちは、鈴名さん」
「あら? 森岡さんは一緒じゃないのね」
「今日は部活で、あの、能矢さんは?」
回りにも見当たらない。何か直してるのかな?
「向こうで自転車を直してるわ。町にはよく有るのよね放置自転車って、おかげで130を越えたところだけど」
それもカウントされるんだ。
「ところで、隣の子は? 同じ学生みたいだけど」
「一年生の木山さんです。昨日のぬいぐるみの持ち主で、能矢さんにお礼が言いたいと」
その時、
「終わったよ雀」
能矢さんが肩掛け鞄を掛けて現れた。そうか、修理道具の入った鞄ごと渡していたのか。
能矢さんは私達を見た後に四枝先生を見て顔をしかめた。
「増えたのは良いけど、まだ断れてなかったの?」
「仕方ないじゃない。そこをなんとか、の一点張りなんだから」
「はぁ……あのですね」
能矢さんは鞄を下ろすと四枝先生の前に立ち。
あの時みたいに、冷たい一言を放った。
あなたのものは、なおせないんですよ
今回で主要人物が揃いました。
それと同時に、残り数回でクライマックスを迎える予定です。
新たに現れた二人は、物語に何をもたらすのか……




