出会い、あるいは再開
「―――という事があったの」
「なにそれ?」
昼休み、友達と共にお弁当をつつきながら、昨日あった事を話していた。
「ちょっとクッシン。そんなの本当にあるわけ?」
私の友達、森岡秋ちゃんに怪訝な顔で見られた。
ちなみにクッシンとは、私のあだ名だ。
噺羽兎奈。名字の噺が口に新だから、口新。
「本当だよ、コレがそのマグカップ」
私は鞄の中からあのマグカップを取り出した。
昨日持って帰って改めて見ても、使ってみても、正常に使えていた。本当に直ってるんだ。
「え、持って来たの?」
「うん。トキちゃん絶対そう言うと思ったから」
「はぁ〜、用意周到というかなんというか」
「とにかく、コレが本当に一度壊れてたも…」
「はいはい、とりあえずその今は使わないマグカップをしまって」
「むぅ……」
全然信じてないや。
「それよりさ、今日あたし部活無いの、帰りにどっか寄って行こうよ」
「うん。いいよ」
という訳で放課後、私たちは駅前の商店街に来た。
「うわ、風強いね〜」
「う、うん」
行き交う人々の間を、何処かのチラシや捨てられたビニール袋が風に舞っている。
「さてと、どこ行こっか?」
「え? トキちゃん決めてないの?」
私はてっきり決めてるものだと思ってついてきたんだけど。
「うん、だって部活が急に休みになったんだもん」
「急に?」
「なんかね、顧問の先生が学校休みで、部長に連絡があったんだって、今日は部活休みにしようって、その連絡が二時間目の休み時間に来たんだよ」
「へぇー」
トキちゃんの部活って、確かバレーボール部だよね? 顧問の先生、どうしたんだろう?
「それでさ……あれ?」
「? どうかしたの?」
トキちゃんが急に立ち止まった。
その時、
ガチャン!
「!?」
「おぉ、やっぱり」
関心するトキちゃんの視線の先には、風に煽られたのか、ファミリーレストランの宣伝旗が倒れていた。
「さっきからガタガタ揺れてたし、重しの台座も不安定だった。多分重しの水が入って無かったんだね」
「……」
地面に落ちた旗を見る。くしゃくしゃになって、書かれている文字は読めない。それに、下の台座が倒れた衝撃でか穴が開いている。
その壊れてた台座を見た時、ふと、昨日の男の人を思い出した。
あの人がアレを見たら、いったいどうするだろう……
「クッシン? どうかしたの?」
「え? う、ううん。何でもないよ」
「そう、じゃあ行こっか」
「う、うん」
倒れた旗を横に見て通り過ぎていく。
でも、気になった私はもう一度振り返って見る。
すると、
「……ここなら来そうね」
その倒れた旗の前に、女の人が立っていた。
長い髪を後ろで束ねている。長ズボンに長袖のシャツと長袖のジャケット、そして、肩から長い紐で妙に膨らんだ鞄をかけていた。
女の人は辺りを見回している。
そして、私と目があった。
「!?」
慌てて前を向く。
「どうしたの?」
「な、何でもないよ」
つ、ついてきませんように……
「さてと、どこ行く?」
「そうだね……」
「ちょっと、そこの人」
うわぁ……
呼ばれたのを無視出来ず、私たちは振り返った。
そこには先ほどの女の人が立っていた。
「なんですか?」
トキちゃんが聞き返す。
「そこのアナタ」
女の人は私を指差した。
「わ、私ですか?」
「アナタ、全身黒ずくめだけど靴だけ白い男、会ったことある?」
それって、昨日の……
「それってクッシンが話してた人じゃない?」
「クッシン? まぁいいわ、ひょっとして、何かアイツが直した物とか持ってたりする?」
「え、えっと……」
私はマグカップを鞄から取り出した。
「コレね」
女の人はマグカップを取ると、上下左右動かして見た。
「……コレ、あの男はどうやって直した?」
「え、あの……その……」
急に光が出て、気付いたら直っていた。なんて言っても信じてくれないよね?
「ひょっとして、急に光が出て、気付いたら直っていた。とか?」
当たってる。その通りだ。
「は、はい……」
「そっかぁ……はぁ……アイツ、なにやってんのよ」
女の人は頭を押さえてため息をついた。あの男の人の知り合いなのかな?
「あの〜、さっきから話に出てるその男の人って、もしかして、あそこにいる人じゃないですか?」
「「え?」」
トキちゃんが指差した方を見ると、
「あぁ!」
倒れた旗の前に、あの男の人がいた。何やらしゃがんで割れた台座に触れている。
「アイツ! やっと現れたわね! はいコレ!」
女の人はマグカップを私に渡すと、
「ここに居たかぁぁぁぁ!」
急に走り出した。向かう先にはあの男の人。
ふぅ……今の内に遠くへ、
「なんか面白そうだね。あたし達も行ってみよ♪」
「え? ちょっとトキちゃん!?」
トキちゃんに手を握られて無理矢理男の人たちの方に連れていかれた。
旗の前で男の人と女の人は口論していた。
「急に居なくなって、いったいなにしてたのよ!」
「居なくなったのはそっちだろ、ボクは動かなかったよ」
「ウソ言うな! 戻って来たら居なくなってたじゃない!」
「……」
「言い返せないようね? なら謝りなさい」
「…………そんなことより雀、コレだよ」
男の人は視線を反らすと倒れている旗に向き直った。
「ちょ、そんなことで片付けるんじゃないわよ!」
「旗に外傷は無し、伸ばせば使えるから……問題は台座の穴だね、雀、ガムテープ」
「まず謝りなさいよ!!」
けど女の人は言いながらも、肩にかけた鞄からガムテープを取り出して男の人に渡した。
男の人はガムテープを適当な長さに切って台座の穴に張り付ける。
「この風だと、またすぐに倒れるかも……」
「はいはい、これ使いませんか?」
「と、トキちゃん?」
トキちゃんはいつの間にか男の人の隣にいた。その手には水の入ったペットボトル。
「重しだね」
男の人はペットボトルを受け取ると蓋を開けて中身を台座の中に注いだ。
「よし、後は旗だ」
続けて旗を拾うと、棒にちゃんと刺し直して整え、台座に立て直した。
男の人は数歩下がって直った旗の全景を見て、
「完璧」
と言った。
「良かったわね。さぁ、今度こそちゃんと謝りなさい」
「行くよ雀」
ガムテープを渡すと男の人は行ってしまう。
「あ、ちょっと待ちなさいよ! ちゃんとアタシに謝りなさい!!」
ガムテープを鞄に戻すと女の人も後を追う。
けれど、
「ちょ〜〜っと待った!」
「トキちゃん!?」
2人の前にトキちゃんが立ち塞がっていた。
「何か?」
「なによ?」
そしてトキちゃんは、
「良かったら、あたし達とお茶しませんか!」
と言った……って。
え、えぇぇぇぇぇぇ!?
今回の登場人物たち、かなり名前が難しいです。おそらくルビ無しでは解読不可能なものもあるでしょう。
ただし、皆の名前には、ある共通点があるのです。
まだ2人だけですが、もしも分かった方、ご連絡をください。
それでは、




