始まり
迷烏として、初の連載作品。
今回はプロローグ、お楽しみください。
「あっ!」
前から来た自転車を慌てて避けようとした結果、手に持っていた買い物袋を落としてしまった。
ガチャン
今、何か嫌な音がしたような……
「あ、すみません」と謝る自転車の運転手の方を見ずに私は袋の中を見る。
音の原因となりそうな物を取り出し、その包装を外す。
「あ……」
そして案の定、音原はそれだった。
前のが壊れてしまったので新しく買ってきたマグカップ。その取っ手がぱっきりと割れ、器部分にもひびが入っている。
せっかく買ってきたのに、壊れてしまったのと同じようになってしまった……
「ど、どうしよう……」
接着剤でくっつくかな……? 取っ手はそれで良いかもしれないけど、ひびの方は難しいかも……
その時、
「……それ、貸してみな」
「え?」
いつの間にか自転車は居なくなり、変わって見知らぬ人が立っていた。
黒髪のショートカット、服もズボンも黒で、真っ黒な男の人。でも、靴だけは白かった。
一ヵ所だけ白い男の人は、私の方に手を伸ばしている。
「こ、これ、ですか?」
その先には割れたマグカップ。
「早く」
奪われるように取られた。
「あ……」
「ふむ……」
ひびや取っ手が取れた部分をまじまじと見る男の人。
「この取れたとこ」
そう言って手を伸ばした。
「え? は、はい」
その手に取れた取っ手を置いた。
「……他に破片は無し、罅も深く無い。なら平気か」
「あ、あの……」
「雀、接着剤」
男の人は自分の後ろに手を伸ばした。でもそこには誰もいない。
「……あ、そうだった」
そして何か思い出したように手を戻し、マグカップに触れた。
「まぁいいか、コレぐらいならなんとか……」
取れた取っ手を元あった場所につける。
瞬間、割れた部分から光が漏れた。
「!?」
光は徐々に消え、完全に消えた時、
「よし」
男の人は取っ手から手を離した。
「あ!」
あのままでは取っ手が落ち――――――なかった。
「あ、あれ……?」
「後は罅か」
男の人がマグカップのひびに指を這わすと、その後から先ほどと同じ光が漏れて、そして消えた。
男の人はマグカップをくるくると回して見ると、
「完璧……ほら」
私にマグカップを向けた。
「え? え?」
よく分からないまま受け取る。
「それじゃ、次は気をつけなよ」
そのまま男の人は行ってしまった。
何だったんだろう……
「……あれ?」
渡されたマグカップを見ると、
「直ってる……」
ひびが無くなり、取っ手の割れ目なく、ぴったりとくっついていた。
接着剤等でくっ付けたようではなく、まるで元から割れていなかった新品のようだ。
「……今の人が?」
名前も告げずにマグカップを直して去っていった。靴だけ白い、黒ずくめな男の人。
いったい、何者なんだろう……
初めまして、あるいはこんにちは、迷烏と言います。
今回は自分の初連載作をお読みいただき、ありがとうございます。
物はいつか壊れる。けどそれを直す男と、それに出会った少女たちの物語。
よろしければ、これからお付き合いのほどを。
感想、いつでもお待ちしています。




