25.ラナベル
足早にテオに連れられ、私たちはギルドへ辿り着いた。
扉を開けた瞬間、熱気とざわめきが、
一気に耳へと流れ込んでくる。
広い室内には、煌びやかな鎧を纏った人、
杖を背負った魔道士、体格のいい男の人、
華奢で可愛らしい女の人まで、
本当にたくさんの冒険者が集まっていた。
──ここが、ギルド……。
圧倒されて、子どもみたいに辺りを見渡してしまう。
そうしていると、聞き慣れない声がこちらに届いた。
「あれ? テオじゃん! 珍しく……二人? パーティに女の子なんていたっけ?」
あちこちへ動かしていた視線が、反射的に止まる。
声がする方に顔を向けると、
カウンター近くで剣を抱えていた青年が、
親しげにこちらへ歩み寄ってくるところだった。
栗色の髪を揺らし、
驚きと好奇心が混ざったような笑みを浮かべている。
知り合い、なのだろうか。
私が答えに迷っていると、
テオがいつもの軽い調子で片手を上げた。
「やっほー、ルイス。今日はこの子の登録に来たんだよ」
「登録?」
青年の視線が、今度はまっすぐ私へ向く。
値踏みするような視線ではない。
けれど、知らない人に見られているだけで、
少し緊張してしまう。
私は無意識にマントの端を握りしめ、
どうにか声を振り絞った。
「は、初めまして。るなと申します」
「っふ」
──堅苦しい挨拶になってしまった。
「笑わないで」
横を見ると、テオが必死に含み笑いを堪えている。
それにつられたように、青年も明るく笑った。
「悪い悪い。俺、ルイスな。テオたちのパーティと、たまに合同でクエストしてるんだ。ブルーローズってパーティにいる」
パーティ。
その言葉に引っかかった。
質問がうまく言葉にならず、思わずテオをじっと見つめる。
それだけで伝わったのか、テオは「あー」と声を漏らした。
「言ってなかったっけ。俺とノルンとアッシュもパーティ組んでるんだよ」
「そう、なんだ……」
「うん。名前はラナベル」
「……可愛らしい名前。意味とかあるの?」
私がそう尋ねると、ルイスが「あー」と首を傾げた。
「そういや俺も聞いたことねぇな。ノルンがつけたんだったよな? テオ」
「そうそう! たしか、昔、小さい頃に見た花の名前だとか言ってた気がするけど」
「気がするって……」
思わずそう呟くと、テオは悪びれもせずに笑った。
「俺、そういうのノルン任せだからさ。響き綺麗だし、まぁいっかって」
「なんだそりゃ」
ルイスが呆れたように笑う。
その時、テオが思い出したように私の手を引いた。
「あ、そうだ。今日は登録しに来たんだった。じゃあルイス、また後で!」
「おう。またな、ルナちゃん。今度、他のやつらも紹介するわ」
軽く頭を下げると、
ルイスは人懐っこく笑って手を振っていた。
私も何か返そうとしたけれど、 その前にテオに手を引かれ、 半ば連れられるように受付へ向かうことになった。




