23.連れ去られた先で
あれから魔法の特訓を重ねて、
気づけばさらに数日が経っていた。
時間はあっという間に過ぎた。
それくらい、私は練習に打ち込んでいたのだと思う。
練習用の的を射抜いた青い光の残像を見つめながら、
私はようやく一息ついた。
魔法を発動させるだけで精一杯だった数日前が、もう遠い昔のようで、
今では、いくつかの攻撃魔法も扱えるようになっていた。
「……よし。これで十分かな」
テオの手が私の頭を撫でる。
妙に距離が近いのも、もう慣れてしまい、
今ではそれが、少しだけ居心地のいい距離にも感じ始めていた。
「なら明日にでもギルド登録に行こっか! 実践が一番いいし!!」
「えっ……。明日?」
「そう! あー……」
返事をしながら、テオの視線と声のトーンが少しずつ下がっていく。
理由は、聞かなくても分かってしまった。
今の私が身につけているのは、
転移した時から着ている破れた服に、
テオから借りたマントを羽織って、どうにか破れた箇所を隠しているだけの格好だ。
他にあるとしたら、テオに借りた大きめのトップスが一枚だけ。
それをワンピースみたいに着て、どうにかやり過ごしていた。
さすがに、この格好のままギルドへ行けるわけがない。
今までは、正直そんなことを気にしている余裕すらなかった。けれど、ギルドへ行くと決まった瞬間、
急に自分の格好が恥ずかしくなったのだ。
私はテオの視線から逃げるように俯き、
ぼろぼろの服を隠すように、マントをきゅっと身体に寄せた。
そんな私を見兼ねてテオは
「それなら服買いに行こ!」と半ば強引に
私を連れ出したのが、今日の朝の出来事だった。
──というわけで、私は今、テオと二人で服屋に来ていた。
素朴な店内には、
つやのある絹みたいな服や、煌びやかな装飾品、
可愛らしい服までずらりと並んでいる。
まるで絵本の中みたいに、
可愛いものや綺麗なものが溢れる店だった。
今の私には、少し不釣り合いに思える。
「るなー! これとかどう!?」
テオが一着のワンピースをひらひらと揺らしながら、
楽しそうに声を上げた。
それは私のいた世界ではあまり見かけない、
レースが施されたワンピースだった。
「可愛いけど……それじゃ戦えないよ」
「えー? 意外と丈夫なんだって、これ!」
不満そうに洋服を元の場所へ戻しながら、
私より何故かテンションの高いテオに圧倒されていた。
可愛いとは思う。
でも、今の私には、
ちゃんと外を歩けて、
少しでも身を守れる服の方が必要だった。
そう思う一方で、
私には服を買うお金なんてない。
可愛いとか、これが欲しいとか、
言えるわけがなかった。
ぼんやりそんなことを考えていると、
猫耳が生えた女性が、服をこちらに見せながら声をかけてきた。
「こちらなんてどうですか? 今はマントで隠れていますが、
お顔も小さいですし、スタイルも良さそうなので、
きっと素敵に着こなせると思いますよ」
差し出されたのは、
黒と赤を基調にした服だった。
サイドに広がる腰布に、
動きやすそうなショートパンツのボトムス。
それに合わせる上着まで揃っていて、
可愛らしさよりも実用性を意識した作りに見える。
「おー、これ着てみたらどう!? せっかくだし、ね? ね?」
そう言うや否や、テオは店員の手からその服をひょいと受け取って、
私の背中をぐいぐいと試着室の方へ押していく。
「ちょ、ちょっと待って……!」
「だいじょーぶ! 着るだけ着てみよ!
似合うかどうかは、それから考えればいいんだから!」
躊躇う私を見て、こうなることは最初から分かっていたのだろう。
半ば押し切られるように、私は試着室に押し込められた。
「じゃ、着替えたら呼んでねー!」
ぱたん、と軽い音を立てて扉が閉まる。




