表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
愛を乞う少女は、漆黒の泥で世界を壊す  作者: ちぇるしー


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/24

魔力の正体3

「で、どうする?」

親父さんの低い声に、部屋の空気がまた張り詰めた。


たとえ魔力を断ち切れても、それで終わりじゃない。

あれは、その場しのぎにすぎない。

壊れた扉。えぐれた床。真っ二つのベッド。


部屋の惨状が、今回のことの異常さを嫌でも物語っていた。

これが何度も起これば、もう一人の問題では済まない。

宿だって無事じゃいられないし、いつか必ず限界が来る。


「次に暴走したら、今度こそ隠しきれねぇぞ。

ノルンがその場にいりゃ何とかなる、なんて話でもねぇだろ」


その一言に、誰もすぐには返せなかった。

ぐうの音も出ない、とはまさにこのことだった。


親父さんの言葉に頷きながら、アッシュが俺とテオを交互に見て口を開く。


「その通りだ……。

ノルンが常に側にいるなんて無理だ。

そもそも、ノルン一人でどうにかできる相手でもない。

少なくとも、三人揃っていないと対処は厳しいだろうな」


アッシュの声が落ちた直後、

それまで黙っていたテオが、そっと手を挙げた。


「……じゃあさ。

コントロールできるようになればいいんだろ?

俺があの子に、魔力操作を教えるのはどう?」


「だが、それだけの問題じゃないんじゃないか?

全属性が暴れてるような状態なんだろ」


「あー……まあ、それはそう」


テオは頬をかきながら視線を逸らした。


「だから、ある程度は魔法を知る必要があるんだよ。

自分で少しでも抑えられるようになれば、その後は……」


そこで、テオは急に言葉を切った。

複雑そうな顔で黙り込み、深いため息を吐く。


「その後は?」


俺が促すと、テオは嫌そうに頭をかいた。


「……俺の師匠に会いに行けば、たぶん何とかなると思う」


「あ……」


アッシュは、何かに気づいたように声を漏らした。

俺も、その反応でようやく気づいた。

そういえば、テオが自分の師匠の話をしたことは一度もなかった。


「俺、追い出されてんだよね……十年前。

すげえ帰りづらいというか……理由もわかんねえし」


「……は?」


思わず間の抜けた声が漏れた。


テオは気まずそうに頬をかき、視線を逸らす。


「いや、ほんとに。

しかも、なんで追い出されたのか、いまだによく分かってない」


「それで、よく会いに行こうなんて言えたな……」


アッシュが呆れたように眉をひそめる。


「だから嫌だったんだって。

めちゃくちゃ気まずいし、正直、会わせる顔もない」


そのあと、部屋に短い沈黙が落ちた。


気まずそうに頭をかくテオを見ながら、

俺は小さく息を吐く。


事情はどうあれ、

今はそこを気にしている場合じゃない。


「……だが、他に当てはあるのか?」


そう口にすると、

誰もすぐには答えなかった。


テオの師匠に頼るしかない。

その答えが、沈黙のまま部屋に残っていた。


親父さんは腕を組んだまま、深くため息をつく。


「気まずいのは分かった。

で、行くしかねぇんだな?」


「……まあ、そうなる」


珍しく歯切れ悪く、テオが答える。


「なら決まりだろ」


その一言で、

曖昧だった空気が、少しだけ前に進んだ気がした。


そこで親父さんが、

ひとつ、わざとらしく咳払いを挟む。


「……で、だ。

修繕費諸々、本来なら十金貨は取るとこだが……

今回は五金貨にまけといてやる。

その代わり、ちゃんと修繕は手伝えよ」


「うわ、安くなったのに全然嬉しくない……」


テオが引きつった顔でぼやく。


「文句は言えねえだろ」


アッシュが間髪入れずに返した。


「……返す言葉もない」


そうして話はひとまずまとまり、

俺たちは翌日に備えて、それぞれ動き出すことになった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ