12.魔力の正体2
魔法に関しては、テオが適任だった。
俺もアッシュも、魔法には少し疎い。
「俺では分からないことばかりだ。テオ、頼む」
「りょーかい。
まずさ……魔力って、属性ごとに色があるんだよ。
火は赤、水は青、闇は紫……って感じ」
テオは指を折りながら続ける。
「まあ、厳密には人によって見え方に差はあるし、闇を黒っぽいって言うやつもいる。
でも、本来の闇属性は紫なんだよ」
そこで一度、テオは息をついた。
「でも……あの子が暴走してた時の魔力、あれは真っ黒だった。
……これが、どういう意味か分かる?」
難しい問いに、三人とも首を傾げるしかなかった。
そんな俺たちを見回して、テオは説明を続けていく。
「普通の魔力なら、どれかの属性の色に寄るんだよ。二つ三つが混ざることはあっても、黒になることなんてまずない。
つまり、あれは……全属性がぐちゃぐちゃに混ざってるもの。簡単に言えばね」
「少なくとも、今まで見たことないよ。……あんなの」
テオの声は静かだった。
だからこそ、その言葉の不気味さが余計に際立った。
「だからさ、騒ぎになる前に先に隠蔽をかけたし、そのあと防護魔法も重ねた。……それでこれだよ?」
「俺は、扉壊して入ったぞ」
ぼそっと言ったアッシュに、テオが即座に振り返る。
「入ってから重ねてんの!」
そのやり取りに、重かった空気がほんの少しだけ緩んだ。
──正直、俺は闇属性か何かだと思っていた。
漆黒が侵食するように広がって、
すべてを飲み込もうとしていた。
闇魔法だと思うには十分すぎる光景だった。
けれど、あの圧に押された時、かすかに聞こえた声も、見えた表情も、何かを壊そうとしているようには見えなかった。
ただ……近づかないでと。
そう訴えるように、すべてを拒絶しているだけに見えた。
だからこそ、テオの説明にも頷けた。
「ま、だからそんなとこ!
コントロールできない限りは、爆弾そのものかな?」
ようやくテオらしい調子が戻ったが、親父さんは先ほどまでの余裕もなく、頭を抱えた。
「また厄介なことになったな……
まぁお嬢ちゃんは悪くないんだが……」
親父さんが頭を抱える横で、テオはなぜか少しだけ口元を緩めていた。
「……ま、でもさ。ノルンがいるじゃん」
不意に向けられた言葉に、俺は眉をひそめる。
「正直、あれには普通の魔法も剣も通らないと思った。
でも、ノルンの剣技は通じた。あれを断ち切れたんだよ」
テオは俺を見て、いつもの調子で言う。
「それって、普通にすごくない?」
「木の棒拾った時は、さすがに俺も死ぬかと思ったが、
ノルンなら何とかするっとは思ってた」
「俺は安全圏で見てたけどね~」
俺はあの時の感覚を思い出す。
……できるかどうかも分からなかった。
それでも、あれを断ち切るしかなかった
あの力が何なのか、俺自身よく分かっていない。
ただ、一つだけ確かなのは──
本来なら剣で断ち切れないはずの魔力に、
昔から俺の剣は届くことがあった。




