11.魔力の正体 1
「その前に、お嬢ちゃんは大丈夫だったか?」
親父さんの問いかけに、
珍しくテオは真面目に答えた。
「不安定そうではあったんだけど、
疲れてたみたいで
布団に入ったら、すぐ寝てたよ」
「……そうか」
短く頷いた親父さんが、
今度は俺たちを見回した。
「じゃあ、聞かせろ」
俺は一瞬、言葉に迷った。
親父さんにだけは、
下手な嘘をつきたくはなかった。
隠すわけにもいかなかった。
俺は、静かに話を始めた。
「今日、クエストの帰りに、
異常な魔力を感じたんだ」
「異常な魔力?
正体は、あのお嬢ちゃんってことかい?」
「いや、分からない。でも、その可能性は高い。
ただ、彼女を見つけた時には、もう魔力はかなり薄れてた。森にいる魔物の気配と見分けがつかないくらいに。
だから、あれが本当に彼女のものだったのかは、正直まだ断定ができていない」
「俺はさっぱりだったがな。
急にノルンが走り出したと思ったら、
テオは妙に落ち着いてるしさ」
アッシュが眉をひそめると、
テオが肩をすくめる。
「だってさー、
あれ、魔力のプレッシャーではあったけど、
敵意って感じじゃなかったし」
その言葉に、俺はわずかに目を細める。
「……敵意じゃない?」
「うん。
部屋の中でぶつかった時の圧は、
明らかに敵意って感じだったから焦ったけど。
森の中で感じたあれは、
もっと別のものだったかなー。
召喚の魔法が発動した直後か、
あるいは、魔力が目覚める時に近いものだったと思うよ」
彼女は、自分が何者なのかさえ分かっていなかった。
名前さえも、曖昧だった。
「話が難しくなってきたが……
つまり、身元の分からないお嬢ちゃんを、
今うちで預かってる状態ってことで間違いないな?」
──分かっていたつもりだった。
覚悟もできてたはずだった。
責任がついて回ることも、
俺の行動が仲間を巻き込む事も。
分かっていたはずなのに……
気づけば、 奥歯を噛みしめていた。
「……」
黙り込んだ俺の横で、 アッシュが低く口を開く。
「その通りだ。 無責任だとは思うが…… あの子もしばらくここに置いてほしい。
宿代も修繕費も、片付けも含めて 俺たちが責任を持つ」
思わず、アッシュを見た。
「……お前一人の話じゃない。」
「……まあ、それは分かったが。
この部屋の有様は何があった?」
「部屋に入った時には、もう様子がおかしかった。
何がきっかけとかは、正直分からないが、
彼女がパニックになった瞬間、
魔力が爆発したように見えた」
歯切れの悪い俺の答えに、
テオがひらひらと手を挙げる。
「あー、これは俺が説明した方がよさそうだよね?」
全員の視線が、テオの方に向いた。
方言が混じりそうになる。




