10.親父さん
「お前ら何をしたらこんなことになるんだ?」
壊れた扉の向こうで、
腕を組んだ親父さんが顔をひきつらせていた。
その場の空気が、一気に凍りつく。
「テオ。痴話喧嘩って言ってなかったか?」
言ってた通りに
ヘイトがきれいにテオへ向いた。
「だって……男女ふたりが
部屋にいたら、そう思うじゃないっすか……
こんな痴話喧嘩、俺も初めて見たっすよ」
テオは絶対に親父さんと視線を合わせようとしない。
そんなふたりの間に割って入り、俺は深々と頭を下げた。
「親父さん、事情は後で説明します。
その前に、彼女をテオかアッシュの部屋で
休ませてやってもいいですか?」
「俺からも頼む」
アッシュも続き、
テオも気まずそうに頭を下げた。
「そりゃあ、ダメだって言うわけないだろー。
案内してやりな!」
その一言で、ぱっと顔をあげ、
目を輝かせたテオは、すぐに手を挙げる。
「なら俺が案内するよ! ね、ルナ。こっちこっち」
相変わらず、調子のいいやつだ
「おい!テオ無理に引っ張るなよ」
「へいへーい!」
ルナの手を引いたテオは、
親父さんの前で一瞬だけ足を止めたが、
すぐに会釈して部屋を出ていった。
「で、どうなんだ」
「……テオなしじゃ、説明できないことがあります。
あいつが戻ったら、全て話します」
親父さんは何も言わず、 壊れた扉をくぐって部屋の中へ入った。
入口から見えてた時点でもひどかったが、
中はそれ以上だったのだろう。
ぐるりと見回してから、 ため息をこぼした。
「どうやったらこれが痴話喧嘩になるんだか。」
「すみません……」
ただ今は謝ることしかできなかった。
「テオが言ってたようなふざけてこうなったわけではない。
あと、扉を壊したのは俺だ。すまない。」
その一言で、 軽い話ではないことは親父さんにも伝わったようだった。
「まぁ、訳ありな感じってところか……
そういえば、昔のお前にそっくりだったな……あの子」
思わず視線を逸らす。
その横で、 アッシュが一瞬だけ俺に視線をやった。
そして、親父さんの視線が、
俺ではなく、もっと遠い昔へ向く。
「あれからもう十年も経つのか…… あの時のお前も――」
その時、廊下の向こうから軽い足音が近づいてきた。
「ただいまー……って、うわ。まだ空気重っ」
いつもの調子で部屋に戻ってきたテオだったが、
中にいる親父さんと目が合い、
さすがに気まずそうに足を止める。
親父さんは小さく息を吐いて、 ゆっくりと俺に視線を戻した。
「……よし。三人揃ったな。 じゃあ今度こそ、最初から聞かせてもらおうか」




