第三十話『深淵を除くときに深淵を見ていると言う事は、みなけりゃいいと言う事である』
ナラらが船でゆっくりしている途中、深海では二人の人間が沈んでいた。一人は、以前にナラがであったスゥと言う男が操る、義体S。そしてもう一人は今回一緒に来いと命令された、D。どちらも、義体を使っての潜伏である。
「ゴボゴボゴボ……。ゴボボボボ」
「変声機付けろよ」
「おっとすまんすまん。たまに忘れてしまうんだ……」
この肉体、義体に慣れていないのか、喋る時でも変声機関を咥えずに喋ろうとするSに対し、無駄に義体を使いまくっているDは呆れる。上で船が進んでいるのを見て、何やら嫌な顔をするDだが、今は船に乗り込む意味もないので無視。
「で、何があるんだここに」
「あぁ。ここに重要な神具……。あったぞ、『深淵鏡』だ」
「深淵鏡ねぇ……。なんなんだよ?」
「こいつは鏡の中に、もう一人の見た人間を作ると言う物だ。……おっと、今俺らはレンズ越し、直接見て無いから無事なだけで、直接見たらお前発狂するぞ?」
「……てか、随分喋りますねあんた。普段は会話もしないくせに」
「まぁコレは俺の部下に喋らせているからな」
「あぁそりゃ喋るか……。とにかく布かなんかで巻けばいいんすよね?」
「あぁ。じゃあ帰るぞ」
何やら事を終えたようで、浮上していく二機。一方その頃、ナラは甲板から海を見ていた。そこそこやる事が無いのだ。そんな黄昏ているナラのところに、浮上してくる二機。何事だと思ってみていると、そのまま飛び立って行く。深夜だったことから、これを見ていたのはナラ以外に誰もいなかった。
「……な、なんだアレ……」
なんなんだろうと思いながら、しかし知った事ではないので、無視して眠る事にしたナラ。何故かベッドにミルが眠っていたが、気にしないことにした。もう何と言うか、疲れていた。
「はぁ……」
眠りについたナラを尻目に、スゥは深淵鏡を現リーダーである『ゲキ』に渡していた。ゲキはスゥの性格を知っているので、さっさと帰るよう指示する。
「コレが深淵鏡か……。コイツの使い方は分かってんだがな」
「あいにくモノとヒトが無いっすからねぇ。どうすんですゲキっさん」
「だからG。貴様を呼んだのだ。見ろ」
深淵鏡にGの姿を映すと、鏡の中にG……。ではなく、全くの別物が映し出される。
「お前は義体であって義体でない生物だからな。コイツを見ても発狂などしない」
「あぁ、そう言う事ですか……。成程。厄介ですねこりゃ。とりあえず天秤を使えるのは現状俺だけ……。って事か」
「そうだ。……問題はあの四つの武器を集められなければ……」
「あ、もう既に刺客送っといたんで。じゃ」
「……スゥ……か。やはり早いな奴は……」
末恐ろしそうな目でスゥを見るゲキ。なるべく敵に回したくないからこうして仲間に引き入れたとはいえ、もし仮に裏切られたら……と、若干怯えていたのであった。




