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舞踏会の入場

「奥様、到着致しました。」


馬車の外から声をかけられハッとしたユリア。

ひと呼吸おいて、馬車を降りた。


目の前には沢山の馬車があり、行き交う人達は皆煌びやかに着飾っている。

その光景のあまりのキラキラ具合に、多少の押され気味になっているユリアを見て、ミュゼットが言った。


「ユリアさん?今日のユリアさんは、他の誰にも負けてませんわよ。」


「ミュゼットさんったら。そんなお世辞言わないでください。」


「ふふふ。」


トーマスは既に王宮にいるので、そこまでは王宮騎士団の団員が案内してくれる事になっていた。


団員にエスコートされ、王宮内を歩くユリア。

ミュゼットにはハンターが迎えに来たので、2人は仲良く先に舞踏会の広間に向かって行った。



「あの方はどちらの奥方かしら?」


「あら、ご存じないの?あの方は、例の!…」


王宮内を歩くと、あちこちからヒソヒソと聞こえて来る。


ユリアは、目が合う人にとびっきりの笑顔で会釈する。


頑張らなくては…とにかく笑顔で…。


ユリアは自分にそう言い聞かせながら、トーマスの元へと急いだ。


煌びやかな廊下を進んだ先にある、控室にトーマスはいた。


「ユリア!」


扉が開いた瞬間に笑顔でユリアを迎える。


「トーマス様、お待たせ致しました。」


トーマスも普段とは違う、正式な騎士団の制服を身に纏っていた。

いつもかっこいいが今日は一段と凛々しく見える。


「今日はすまないな、ユリア。」


「そんな事!とんでもありません。私はトーマス様の妻ですから、これもお役目です。」


トーマスは苦笑いをする。


「ユリアは初めての社交界だったな。」


「は、はい。」


トーマスはユリアの手を握った。


「そんなに緊張しなくても大丈夫だ、側にいるから。」


「は、はいトーマス様。」


「では、行こう。」


トーマスはユリアの手をしっかりと腕に絡ませた。

そして、ユリアにニッコリと微笑むとゆっくりと歩き出す。


舞踏会が行われる広間の大きな扉の前に着いたユリア達。

ユリアはてっきりそのまま入っていくのかと思ったが、違うらしい。


順番でもあるのかしら…


その時、扉の向こうから大きな声で声が聞こえた。


「王宮騎士団副総長、トーマス・クリムト様!ユリア夫人!」


その声と同時に扉がゆっくりと開く。


「うそ…こんな大々的に名前を呼ばれるんですか!」


「ああ、一応次男とはいえ公爵家だからな。」


ああ、忘れていた。

そうだった…トーマス様は公爵家の次男だったんだ。


ユリアは絶望的な顔をしていた。

舞踏会の会場では、目立たず大人しくしていようと勝手に思っていたがここまで大々的に顔を知らせてしまうとは。


「ユリア。」


トーマスは扉が開ききらない所で、ユリアに小さく話しかけた。


「大丈夫だよ。ユリアはとっても綺麗だ。」


「えっ?」


それだけ言うと、トーマスは前を向いてしまった。

ユリアが見たのは、真っ赤になったトーマスの耳だけだった。



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