変身したユリア
次の日から、晩餐会の準備を始めたユリアは
ミュゼットにも助けを求めた。
「私に任せて!」
ミュゼットは生まれながらの貴族のお嬢様。
晩餐会の支度はお手の物だった。
あれよあれよと言う間に、晩餐会に必要な物が出来上がって行く。
そして、ついに晩餐会の日がやって来てしまった。
ユリアの事が心配だからと、自分も晩餐会に出席する予定にも関わらずクリムト邸にやって来たミュゼット。
「わたくしは、今日はここからユリアさんとご一緒しますわ。」
そう言って、既に完璧に晩餐会の支度を仕上げた姿でやって来た。
本物の貴族のお嬢様とはこういう姿なんだ…とユリアはミュゼットの美しさに魅入ってしまった。
「さぁ、ユリアさん!ユリアさんも素敵に変身よ。」
周りの楽しそうな雰囲気とは逆にユリアは緊張していた。
貴族の奥様になったからと言って、元々は平民の出。
自分には内から滲み出る気品など出るはずもない。
考えれば考えるほど、憂鬱になってしまう。
久しぶりにメリーにメイクやヘアスタイルを仕上げてもらい、言われるままドレスに袖を通す。
「あら、ユリアさん。そんな顔をしてはいけませんわ!ユリアさん、ご自分に自信を持って!」
ミュゼットがユリアの肩をポンと叩いた。
ユリアは鏡に映る自分の姿を初めてきちんと見る。
「えっ…これ私?」
そこに写っていたのは、自分とは思えない上品に仕上がったユリアの姿だった。
髪はゆるくウェーブをかけ、高過ぎないアップにし
メイクは元々の綺麗な肌を生かしたナチュラルな雰囲気。
しかし、ナチュラルではあるがしっかりとした印象になっていた。
「ユリアさん、綺麗ー!」
ミュゼットが自分の事の様に喜ぶ。
「はい!奥様!とってもお綺麗ですよ。」
仕上げてくれたメリーも誇らしげだ。
「2人ともありがとう!これで何とかごまかせるわ。」
「ごまかせるだなんて!そんな謙遜しないでくださいな。ユリアさんはとってもお綺麗なのよ?自分で気付いてないの?」
「まさか…」
ユリアは結婚する前、カフェの仕事ばかりだった為自分の身なりに気を使う事をして来なかった。
普段は、カフェで着るお仕着せが数枚。
クローゼットの中には普段着が2〜3枚という悲惨さだった。
ちなみに現在のクローゼットには、軽く100着はあるが未だに全部着ていない。
「トーマス様が惚れ直すわよー!」
ミュゼットに言われて、なんだか急に恥ずかしくなったユリア。
最後に、キラキラ光るネックレスを付けてもらい支度は完成した。
邸の使用人全員が見送る玄関。
「それでは行ってまいります。」
「行ってらっしゃいませ。」
執事長のローマンが礼をすると、後ろに控えている使用人が一斉にお辞儀をした。
「メリー、エリアスの事お願いね。」
「かしこまりました。」
ユリアは大きく深呼吸をして馬車に乗り込んだ。
トーマスと結婚して初めての晩餐会。
ユリアは手をギュッと握りしめて王宮へ向かった。




