時を待つトーマス
「うっ…いーたーいーーーー!」
「奥様、まだ力んではいけません!大きく息を吸ってください!」
医者がユリアをなだめるが、当の本人はそれどころではない。
痛いのだ。
今まで生きてきてこんなに痛い事はないくらい痛いのだ。
「あーーー!いったーーーい!」
激痛の後、段々痛みが治った。
陣痛の間隔が段々短くなり、いよいよ産まれるという一歩手前まで来た。
「まだ…ま…だ…ダメです…。ト、トーマス…様が…」
ユリアがそう言った時、寝室のドアが思い切り開いた。
「ユリア!!」
汗だくで走り寄ったのは、トーマスだった。
「ユリア!大丈夫か!ユリア!」
ベッドに横たわるユリアの手を取り、ユリアに話しかけるトーマス。
「トーマス…様。」
「ああ、戻ったぞユリア。」
トーマスの顔を見てホッとしたのも束の間、また激痛だ。
「いたーーーいーー!」
その痛がりように怯むトーマス。
「大丈夫なのか?こんなに痛がって!」
見るとトーマス以外の人間は誰も焦ってはいなかった。
「大丈夫でございますよ。もうすぐ産まれるのです。」
すると、マクゴナルがトーマスの手を引いた。
「さぁ、そろそろ産まれるだろうからトーマス様は部屋を出てくださいね。」
「いや、しかし…」
すると、横からローマンが顔を出した。
「旦那様、まずはお身体を綺麗に。そんな汗だくで生まれたばかりのお子をお抱きになるのですか?」
トーマスはハッと自分の姿を見た。
「そ、そうだな。よし、湯だ!ローマン頼む!」
「はい、かりこまりました。」
それから、1時間ほどユリアの大きな声が邸に響く。
身体を綺麗にしたトーマスもきちんとした服に着替えその時を待った。
トーマスは邸内をウロウロと歩き回り、寝室の前を行ったり来たりしている。
そして、しばらくして
寝室の中から声が聞こえた。
「奥様!もう少しですよ!」
「はい!力んで!」
トーマスはドアに耳を付けて中の様子を聞いた。
「もう一度!力んで!」
「うーゔーうーー」
ユリアの力む声が聞こえる。
トーマスは自分も一緒に力んでしまう。
「ゔーうーゔーゔーぅぅーー…うーー!!…………」
一瞬部屋の中が静かになった。
トーマスはドアに耳を当てて中の様子を伺った。
「どうしたんだ…」
すると、次の瞬間
待ちに待った声が聞こえる。
「おぎゃーーー!」
トーマスはその声を聞いて、ホッとその場に座り込んでしまった。




