トーマスの声
トーマスは王宮の会議室にいた。
大きな円卓には、王宮のお偉いさんが集まり
来る王室の式典の警護をどのようにするか話し合われていた。
今はトーマスが騎士団の警備配置について述べている所だった。
「騎士団は、いつもの通り全員出動致します。」
中央にある黒板を指しながら、説明するトーマスの声はとても響くいい声だった。
声には誠実さがにじみ出ており、たとえトーマスがデタラメを言ったとしても真実に聞こえるだろう。
「魔法での攻撃にも備え、王宮魔法使いの会場への配置も段取り中です。」
トーマスの隙のない警備配置にお偉いさん方も頷いている。
「この度は、国外からの来賓も多いため王都での警備もしっかり行うようにとの王様からのお言葉です。」
摂政が王様からの言葉を述べ、会議は終了した。
会議室からトーマスが出ると、扉の所にハンターが立っていた。
「あ、トーマス様!先程、トーマス様への伝言を預かりました。」
ハンターが手に持っていた白い紙を渡すと、トーマスは急いで広げた。
内容を見たトーマスは、血相を変えて走りだす。
ハンターはその後を追いかけた。
元々トーマスは鬼の副総長と呼ばれるだけあり、自分にも厳しく稽古をしている為、若い騎士団よりも身体能力が高い。
そんなトーマスの足にハンターが付いていけるはずもなく、ヘトヘトになりながらトーマスを追いかけた。
「ト、ト、トーマス様ー。お待ちくださいー。」
そんなハンターを見て、トーマスが叫んだ。
「産まれるんだ!ハンター!産まれるんだ!」
こんなトーマスの明るい声を聞いたことがあるだろうか?
騎士団の誰もが鬼の副総長のこの声に驚いた。
「はぁ、はぁ、はぁ、産まれる?……!!えっ!産まれる!?」
ハンターはしばらくしてトーマスの言った意味が分かった。
しかし、その時はトーマスの姿はどこにもなかった。




