逃げるスキラム
スキラム公爵の姿が玄関に見えたハンプトン辺境伯は、大きな声で言った。
「カイト・スキラム公爵殿!!今すぐ出てくるように!」
その言葉にスキラム公爵はカッとなる。
「爵位が下のそなたに命令される覚えはない!」
「理由ならここにある。」
そう言ってハンプトン辺境伯は懐から1枚の紙を出した。
「ここには、スキラム公爵殿が貿易の際の売り上げを横領していた事、加えて他国から密輸に際しての見返りとして金品を受授していた事が書いてある!他にもまだあるがここで全部読み上げるのは些か時間がかかるが…」
スキラム公爵としては、全て身に覚えのある事だった。しかし、絶対に他にはバレないように完璧な隠蔽をしていた。
しているつもりだった。
「くそっ!」
スキラム公爵は内部に内通者がいるのだと勘付いた。
でなければバレるはずはない。
玄関先で険しい表情をしているスキラム公爵に向かってハンプトン辺境伯は言った。
「身支度の時間を差し上げます!その後こちらへ!でなければ、こちらから突入致します!」
スキラム公爵は、自室に走り
金庫の中から金目の物を急いでバッグに詰めさせた。
「早くしろ!それから兵士を集めろ!特に手練れの兵士を集められるだけ集めて秘密の裏口に馬と共に待機させろ!」
スキラム公爵の屋敷に勤める使用人達は、大変優秀な物達が多かった。
スキラム公爵の命令を遂行する使用人達。
あっという間に、バッグ5つ分ほど詰めた金目の物を何頭かの馬に乗せて裏口に待機させていた。
スキラム公爵が裏口に到着すると、20人ばかりの兵士が待っていた。
「これから海沿いを走って山の向こうまで行く!その間、私を警護しろ!」
「……はい。」
兵士達は、自分達の主人は逃げるのだとわかった。
しかし、スキラム公爵に歯向かうものは居なかった。
何とかバレずに海沿いを走るスキラム公爵一行。
もう少しで山道に入る所まで来た。
すると、それまでスキラム公爵を護衛していた兵士達が馬の歩みを止めた。
「なんだ!どうしたのだ!」
イライラしながら怒鳴りつけるスキラム公爵。
しかし、兵士達は一向に進もうとしない。
スキラム公爵のイライラが爆発する寸前、兵士の隊長が口を開いた。
「公爵様、わたくし達はここまででございます。この先は我が領土ではなくなりますので…」
スキラム公爵の治めている土地は、この山の麓までであった。
この山は金が取れる為、山の中は王都の管轄である。
「ふんっ。」
スキラム公爵は兵士達をギロッと睨み、何も言わずに山の中へと入って行った。
山の中へと進むスキラム公爵の後ろ姿を見ながら、兵士の隊長が言った。
「我々の任務はここまでだ。この後はハンプトン様にお任せしよう。」




