ピスの港町
ユリア達が煙の中から避難していた頃
王都で王宮騎士団の派遣要請を済ませ、一足先にピスに帰って来た領主のカイト・スキラム公爵は屋敷の地下のその更に地下に居た。
そこは松明の光を頼りに来るしかない場所で
みるからに怪しい雰囲気を出している。
お付きの人間も連れずに1人松明を片手にその場所までやって来たスキラム公爵は壁の前に立っていた。
場所を確認するようにレンガを数回撫でると
カイト公爵は思い切り壁を押した。
すると、壁は音もなく動き入り口が現れたのでる。
カイト公爵が素早く中に入ると、また壁は元通りに戻った。
公爵は中に入ると、まず目の前の皿にオイルを流し入れた。
オイルはその皿から、管を通り他の皿へと流れていく。
そこに持ってきた松明の火を移す。
すると、その火は部屋の奥まで順々に付いて行き
一気に明るくなった。
公爵が中に進む。
進んだ先には、怪しげな祭壇があり
その前に跪いた公爵は、祭壇に向かって話しかける。
「ライカ様、王宮騎士団はこのピスへと向かっております。…どうかライカ様の儀式が滞りなく行われますように…」
それからしばらく祭壇の前で瞑想した後、公爵は深々と頭を下げて部屋を出て行った。
何もない壁を押すと、壁がまた音もなく開いた。
スキラム公爵は、松明を元の場所に戻し
地上に出る。
すると、屋敷内が騒がしい事に気がついた。
「旦那様!大変です!」
屋敷の執事が慌てて走り寄ってきた。
「何事だ。」
スキラム公爵はまだ落ち着いていた。
「そ、そ、そ、それが!」
執事は慌てているのか上手く話せない。
そこに勢いよく兵士が入って来た。
「公爵様!」
兵士は息を切らしながら公爵に告げた。
「ハンプトン辺境伯が大軍を引き連れて屋敷前におります!公爵様の身柄を引き渡せと!」
「な、な、なんだと?」
スキラム公爵は、ハンプトン辺境伯に捕らえられる覚はなかった。
もし、自分を捕らえに来るとしたら
騙されたと分かった王宮騎士団くらいだ。
スキラム公爵は、勢いよく屋敷の玄関の扉を開ける。
そこには何百人という大軍を引き連れた
ハンプトン辺境伯の姿があった。




