鬼副総長
ユリアとトーマスがライカ達を追って階段を降りると、そこはすでに炎が回っていた。
「ユリア!これ以上は危ない!」
「で、でも!」
ふと炎の中に、黒装束の男が横たわっていた。
その横には人間の骨があった。
ユリアとトーマスに気がついた黒装束の男は、2人言った。
「ライカ様はお亡くなりになりました。私ももうすぐライカ様の元へ行く。」
やはりこの骨はライカだったのかとユリアは思った。
「ライカ様はこの200年、自分を裏切り他国へ追いやった婚約者殿を怨んで生きてきた。その姿を側で見ているのが辛かった。何も出来なかった私の代わりに、ライカ様を悲しみから救ってくれて礼を言う。」
その時、天井が崩れた。
「早く行け!私はライカ様の魔術で生きながらえていたのだ、もうすぐライカ様と同じ骨になる。助からん!」
その言葉を聞いて、トーマスがユリアの手を引く。
「行こう!」
ユリアは黒装束の男に向かって叫んだ。
「さようなら!ライカさんを大切にしてあげてください!」
「ああ、先ほど愛していると伝えたよ!早く行け!」
黒装束の男は、ユリアとトーマスに手を振った。
炎を避けながら、階段を駆け上がる2人。
すでに煙も上がってきている。
階段を上り切り、地下宮殿に出た時には
宮殿内も煙が充満していた。
「ユリア!こちらへ!」
トーマスはユリアを横抱きにした。
そして、一目散に地上への階段を上り始めた。
その頃、地上ではミュゼット達がハラハラしながらユリアとトーマスが戻ってくるのを待っていた。
何日か前に、遠征から引き返して来た王宮騎士団の隊がペナント村に到着していたので村人の避難をエディが先頭で促している。
街の真ん中にある教会から煙が出ているのを見た村人達が、何事かと集まって来てしまったのだ。
「ユリアさん達、大丈夫かしら…」
ミュゼットは手をギュッと握り教会の扉を見つめた。
ミュゼットの隣には、所々服が焼け焦げているハンターがいる。
「ミュゼットさん、大丈夫ですよ。トーマス副総長がついておりますから。」
そう言ってミュゼットの手を両手で握った。
その時、教会の扉がドン!!という音と共に開いた。
中から出て来たのは、ユリアを横抱きにしたトーマスだった。
「ユリアさん!!」
ミュゼットとハンターが駆け寄った。
「良かった!良かったわ!」
2人とも煤汚れていたが、怪我はないようだ。
「ミュゼットさん、ハンターさんもご無事で。」
「エディはどこだ。」
トーマスがハンターに言った。
「はい、エディ殿は到着した騎士団と共に村人の避難指示をしております。」
「そうか。ハンター悪いがエディを補佐してやってくれ。」
その言葉にミュゼットが言った。
「トーマス様!ハンター様は怪我人ですわよ!トーマス様とお兄様をお助けして稲妻に焼かれたではありませんか!それなのに!酷いわ!鬼!鬼副総長!」
ミュゼットがトーマスを睨めつけた。
「ミュゼットさん、やめて下さい。」
ハンターは、ミュゼットを嗜めるとトーマスに敬礼して言った。
「申し訳ありません!すぐに隊と合流致します!」
ハンターはミュゼットを見て手を握り言う。
「僕は騎士ですから、これくらいでは平気です!仕事が片付いたら、ミュゼットさんにお話があります!必ず会いに行きます!待っててください!」
そう言いながら、ハンターはエディ達の元へ走って行った。




