ミュゼットを守れ
王都にあるクリムト家の屋敷はいつになく静かだった。
体調が思わしくなかったユリアも回復し、リビングで紅茶を飲みながら過ごしていた。
「ユリアさんの体調が良くなって安心しましたわ!」
「心配かけてごめんなさい。でも、もう大丈夫です。」
ユリアは心配そうに見るミュゼットには微笑んだ。
しばらくして、各自の寝室に戻る。
これからベッドに入ろうと言う時だった。
ガタンッ!
何か大きな音がした。
ユリアはその音に気づきミュゼットの方を見た。
ミュゼットは窓際に立って外を見ていた。
「ミュゼットさん!窓から離れてください。」
ユリアがミュゼットの方に駆け寄ろうとした時、またしてもユリアの身体に異変が起きた。
グラっと目の前が真っ暗になり、そのままうずくまってしまったのである。
「ユリアさん!」
ミュゼットはユリアに駆け寄った。
「誰か!誰かいませんか!」
廊下に待機していたハンターが部屋に駆け込んできた。
「どうしましたか!」
「ユリアさんが、急に!」
ミュゼットがユリアの身体を起こすと真っ青な顔色をしたユリアが薄く目を開けた。
「ミュ、ミュゼットさん…私は大丈夫…だから…早く逃げて…くだ…さい。」
「え?ユリアさん!逃げるって?」
その時、寝室の窓がガチャン!と割れた音がした。
ミュゼットとハンターが窓を見ると
そこには黒いフードを被った者が数人居た。
ユリアはクラクラする目を開けてミュゼットにしがみ付く。
「ミュゼット…さん。」
ハンターはミュゼットとユリアを守らなければと、立ち上がり黒いフードの者たちに向かっていく。
しかし、ハンターは近づく事も出来ず魔法で跳ね返された。
「ミュゼットさん!早く!逃げてください!早くマクゴナル様の所へ!」
ミュゼットが立ち上がって寝室のドアへ向かおうとしたが、一瞬のうちに透明な壁に遮られた。
「え?どうなっているの?」
ミュゼットとユリアは透明な球体に閉じ込められてしまったのだ。
「くそっ!生け贄の娘だけで良かったものを!」
余計な人間が球体に入ってしまった事が気がかりだったが、生け贄を捕まえて帰るという使命があった為黒いフードの者たちはユリアも一緒に連れて行く事にした。
「かまわん!そのまま連れて行くぞ!」
ハンターは先程の魔法で跳ね返され、まだ動けないでいた。
「ミュゼット…さん。ユリアさん…。」
黒いフードの者たちは、1人2人とその場から消えていった。
最後に残った者が球体と共に消える少し前に寝室の扉が大きな音を立てて壊された。
「ユリアちゃん!」
「コートおばあちゃん!」
「ユリアちゃん!魔法は!」
「今はダメみたい!お願いします!トーマス様に!トーマス様に早く伝えて!」
その言葉が終わらないうちに、黒いフードの者と球体は消えてしまった。




