派遣要請
騎士団の宿舎にある自分の執務室では、トーマスが書類を見ながら難しい顔をしていた。
ちょうどそこにエディとハンターが執務室に入って来た。
「どうしたんだ?トーマス。」
エディはトーマスの後ろから書類を覗き込んだ。
「見るな…機密書類だ。」
「はいはい。」
エディは素直にトーマスから離れた。
「しかし、副総長殿。どうされたのですか?」
トーマスは書類を机にしまいながら、ため息混じりに話し出した。
「東の海で海賊騒ぎだ。騎士団から精鋭部隊を派遣して欲しいとの懇願書だ。」
「東の海?東かぁ…ピスの港町辺りか。」
「ああ、海賊騒ぎはたいした事はないが…精鋭部隊を派遣しろというのがな。」
「しかし、海賊騒ぎは前々から王様も頭を悩ませていた問題ですよね?」
するとトーマスが言った。
「ハンター、考えてみろ。今、騎士団の精鋭部隊を派遣したらミュゼットはだれが護衛するんだ。」
それを聞いてハンターがハッとした表情になった。
その顔を見ながらトーマスが続けた。
「しかも、海賊騒ぎは今に始まった事じゃない。その為にピスの港町には有力な部隊を配置しているんだ。」
エディが手で顎を撫でながら口を開いた。
「怪しいって事か。」
トーマスは静かに頷いた。
「このピスの港町を納めているカイト・スキラム公爵は謎の多い人物だ。噂では、怪しい宗教を崇拝しているとか謎の儀式を行なっているとか。」
「マジかよ!絶対黒じゃねぇか!」
エディが勢いよく立ち上がった。
「まだ限りなく黒に近いグレーだ。落ち着け。」
トーマスに言われエディは大人しくソファに座る。
「では、このスキラム公爵がミュゼットさんの生け贄の件に関わっていると?」
トーマスは目を閉じたまま考え込んでいた。
「まだ分からん。しかし、わざわざこのタイミングで騎士団の精鋭部隊を派遣して欲しいと言うのは怪しいな。気をつけなければならん。」
「それで、どうするんだ。」
「王様の許可も下りたからな。行くしかないだろ。俺とエディは行かなければならん。」
「何でだよ!ミュゼットはだれが守る!」
「仕方ないんだよ。あちらからの名指しだ。王様には、今回のペナン村の事は報告していないからな。」
そう言ってトーマスはハンターを見た。
「今回の精鋭部隊の中には、ハンター…お前は入っていない。」
「は、はい!」
「だからお前は残ってミュゼットを護衛しろ。」
「分かりました!命にかえてもミュゼットさんをお守りします!」
すると、エディは立ち上がってハンターを見た。
「じゃあ、今から出発の日まで特訓だな。」
「え!」
トーマスも立ち上がる。
「俺たちが特訓すれば、少しは良くなるだろう。」
ハンターは少し緊張した様子だったが
ミュゼットへの想いを胸に拳を握りしめた。
「はい!よろしくお願いします!」




