秘密部隊
王宮には、公にされていない物が数多く存在する。
その中に、表立って出来ない捜査や潜伏などの精鋭が集まる部隊がある。
その部隊の存在は王宮内では、王様とその周りのごく近しい人間だけが知る。
王宮騎士団の副総長になったトーマスは、その存在を知っている数少ない1人である。
トーマスは王宮とは別にあるその秘密部隊の宿舎にいた。
「これが、潜伏してほしい内容だ。」
トーマスの目の前には、ごく普通見た目の男が座っていた。
「ペナン村ですか…」
「ああ。この村に潜伏して欲しい。」
「分かりました。適任者を私が選んで送り込んでおきます。」
「詳しい内容はそこの通りだ。くれぐれも失敗のないように。」
「承知しております。」
「それから、これを。」
トーマスは封筒を手渡した。
「これをハンプトン辺境伯に。」
「かしこまりました。」
座っている男は、トーマスが言わなくても様々な事がわかっているようだった。
「では、これで。」
「承りました。お気をつけて。」
トーマスが部屋を出ていくと、その男はドアと反対側のドアから階段を降りた。
階段を降りた先には、もう一つ大きな扉がある。
その重いドアを開けた先には、大きな広間が現れた。
男が入ってくるのを見ると、1人の長身の男が近づいてきた。
「隊長、今回の任務は。」
「この中に書いてある。お前と部下を1人連れてすぐに出発しろ。」
「はっ!」
長身の男は、書類を受け取ると駆け足で去っていった。
そして、その後ろに控えていた男に隊長と呼ばれた男がハンプトン辺境伯への封筒を手渡す。
「これをハンプトン辺境伯に。急ぎだ。」
「はいっ!」
30人ほどの秘密部隊の隊長を務めるこの男は、1番奥の部屋に入った。
その部屋は、隊長の執務室である。
男はソファに座り、窓のない部屋の天井を見上げ言った。
「一波乱ありそうだな。」
数日後、王宮騎士団の精鋭部隊が出発した。
トーマスが屋敷を出る時、ユリアにこんな話をしていた。
「おそらく、騎士団がいない間に何か動きがあると思うが安心して普段通りにしておいて欲しいんだ。」
「普段通りにですか?」
「ああ。こちらが何かに気づいたりしているのを知られては刺激するだけだからな。」
「それと何かしてくるのであれば、魔法だろうから…その時は俺たちよりユリアの方が頼りになる。」
「そんな事ないです。」
トーマスは小さく笑った。
「何が起きても大丈夫なように手は打ってあるから。屋敷の結界だけはきちんと張っておいてくれ。」
「わかりました。お任せください。」
「では、行ってくるよ。なるべく早く帰る。」
トーマスはそう言って、ユリアを抱きしめキスをした。




