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真夜中のキス。

ミュゼットは真夜中に目が覚める事など

今までの人生にはなかった。


寝つきが良く目覚めも良いミュゼットにとって、初めての経験だ。


「どうしたのかしら…私。」


隣のベッドを見ると、ユリアが寝ていた。


「そうだわ、ユリアさんが一緒にいてくださってるのだったわ。」


昨日は、自分が誰かの生まれ変わりで

このままだと捕まって生け贄にされると言われた散々な1日であった。

自分では気づかなかったが動揺しているのだろう…とミュゼットは思った。


「そうだわ…ハンター様。」


ミュゼットはユリアを起こさないようにベッドから降りて、素足のままドアに向かった。

さすがに部屋着のままという訳にはいかないので、ソファにかけてあったショールを羽織る。


ドアを静かに開けると、目の前にハンターが座っていた。


「ミュゼットさん?」


「ハンター様…」


ハンターは真夜中にミュゼットが部屋から出てきので、何かあったのかと急いで立ち上がった。


「どうかされましたか!」


ハンターが駆け寄るとミュゼットは首を横に振り言った。


「い、いえ違うんです。ちょっと目が覚めてしまって…ハンター様のご様子を伺おうと。」


ハンターは、ホッと息をつき安心した笑顔を見せた。


「なんだ…そうでしたか。よかった…」


「申し訳ありません、ハンター様。」


「では、少しお話しませんか?また眠くなるまで。」



ハンターは、廊下にもう1つ椅子を置き

ミュゼットをエスコートする。


「ハンター様、今夜は本当にありがとうございます。」


「いえ、私は騎士団の騎士ですので!」


少し間をおいてハンターがさっきよりも小さな声で言った。


「そ、それと…私自身、個人的にですね…ミュゼットさんをお守り…したいの…です。」


ミュゼットはハンターの言葉を聞いて、ハンターの方を見た。

しかし、ハンターは下を向いて赤くなっている。


「ハンター様…ありがとうございます。わたくし、とっても嬉しいです。」


ミュゼットとハンターは、長年進展のない関係ではあるが2人の想いは通じ合っている。

あと一押しが足りないのである。


「ミュゼットさん…ぼ、ぼくが、命をかけて…守りますから。生け贄だなんて…させませんから。」


ハンターは思い切って顔を上げた。


「はっ!」


目の前には、ミュゼットの顔があった。

ミュゼットはハンターをずっと見つめている。


ハンターはそのまま後ろに倒れそうになったが何とか我慢した。


…こ、これは、どうしたら…ミュゼットさんが黙ってこっちを見てる。なんだ、どーしたらいいんだ…


ハンターは心の中で、焦っていた。 

こんな近くでミュゼットを見た事がないのだ。


…どうしよう…変な気持ちになってしまう。

…今はミュゼットさんを守らなきゃいけない時なのに…抑えろ自分!我慢だ自分!…


一向に動かないハンターに更に少し近づくミュゼット。


ミュゼットはハンターの目を見ながら思っていた。


…ハンター様…ここまで近くにいるのだから、キスしてくださるわよね?…でも、もししてくれなかったらどうしましょう…わたくしから動いてはダメよね。

 

ミュゼットは草食の皮を被った肉食女子

「ロールキャベツ女子」というのだろう。

貴族の令嬢であるがゆえ、自分では行動は出来ないが心の中では男性に引っ張ってもらいたいのだ。


…ハンター様…お願い…。



一方ハンターは、まだ葛藤していた。


…どうしよう…こんな事をしたら、ミュゼットさんに嫌われてしまう…でも…もう我慢…できない!


「ミュゼットさん。」


ハンターはミュゼットをそのまま抱きしめた。


「ハンター様…。」


「申し訳ありません。今はこの様な事をしてはならない時なのは分かっています。騎士として男として、力不足をお許しください。」


ハンターはミュゼットを優しく抱きしめたまま言った。


「本当は、もっとミュゼットさんを近くに感じたいと思ってしまった自分が恥ずかしい。」


「ハンター様…わたくし嫌ではありません。」


ミュゼットはハンターに抱きついた。


「わたくしはこうしてくださるのを待っていました。だから、嬉しいです。」


ハンターは、抱きつくミュゼットを体から離し

じっと見つめた。

ミュゼットもハンターを見つめる。


「ミュゼットさん、ごめんなさい。もう、我慢の限界です。」


ハンターがミュゼットを力強く抱き寄せた。



暗い真夜中の廊下の隅で

2人の影が重なる。


その影は朝方まで寄り添っていた。



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