ジョセフの思い。
長らくお休みしてしまいました。
また少しずつ再開して行きますので
よろしくお願いします!
┏○)) ぺこり。
ジョセフは、体調が優れないというトーマスの為に
あたたかいミルクと果物を用意し部屋のドアをノックした。
「失礼いたします。」
ジョセフは一礼してから部屋に入り、ソファに座るトーマスに話しかけた。
「体調が優れないとお聞き致しましたので、あたたかいお飲み物と果物をお持ちしました。」
「ありがとう、そこに置いておいてください。」
ジョセフが見る限り、トーマスの顔色はさほど悪くないように見えた。
しかし、明らかにトーマスの声には力がなかった。
「失礼を承知でお聞きいたしますが、トーマス様…何かございましたか?」
ジョセフにいきなり確信をつかれたトーマスは、何も言えずじっとジョセフを見ていた。
「…やはり、何かございましたね?」
「何故そう思うのか理由を聞かせてもらえるかな。」
ジョセフは、物腰が柔らかく静かな雰囲気ではあるが鋭さを持ち合わせているとトーマスは感じた。
ジョセフは一呼吸してから、口を開く。
「わたくしは、自分の主がいつどのようにお過ごしになったか把握しております。ですので、昨夜バルコニーでお過ごしになった事も存じてるおります。」
それだけ言って、ジョセフは軽く目を閉じた。
それはトーマスの次の言葉を待っているかのようだった。
トーマスは、今のジョセフの言葉に全ての答えが入っていると察した。
「貴方は、このお屋敷に昔からのいるのでしょう?」
「はい、わたくしは旦那様がお生まれになる前からこちらに仕えております。」
ジョセフの声からはあまり感情を感じとる事はできないが、おそらくこの初老の執事はこの屋敷であった事を全て知っているのであろう。
トーマスはジョセフの方を見た。
「ジョセフさん。」
「はい、なんでございましょう。」
「率直にお聞きします。貴方は全て知っているんですね?」
「わたくしは、このお屋敷の筆頭執事でございます。ほとんどの事は把握していると思いますが。」
「昨日、バルコニーでの私とハンプトン様の会話の内容も?」
「………はい。」
「では、どう思いますか?貴方はあの事について。」
トーマスの言葉にジョセフはしばらく考えてから、ゆっくりと口を開いた。
「少々長くなりますが、よろしいでしょうか?」
「ええ、ではこちらにお座りください。」
トーマスはジョセフにソファに座るように合図した。
ジョセフはトーマスの向かい側に座り、話し出した。
「旦那様とその恋人であった方。ここではご令嬢と申しておきましょうか。旦那様とそのご令嬢様は本当にお気持ちを通わせていたと存じます。」
ジョセフは目を閉じた。
「そのご令嬢様が姿を消してから、旦那様は本当にひどく落胆されておられました。何故、最も早く迎えに行かなかったのかと。…側にいるわたくしも辛い日々でした。」
トーマスはジョセフの話を黙って聞いている。
「旦那様がまだ独り身でいらっしゃるのは、そのご令嬢様の事をまだ愛していらっしゃるからです。縁談も多々ございましたが、旦那様は全てお断りされています。」
「そのご令嬢の娘の話は?」
「はい、そうですね…今から1年半程前でしょうか?旦那様が生き生きした目でその方の話をされておりました。もしかしたら、あの方の娘かもしれないと。しかし、迷っていらっしゃいます。」
「迷う?」
「確かめるのが、怖いのでしょう。」
ジョセフは眉間にシワを寄せている。
「旦那様はこうおっしゃっていました。今更、父親だと名乗り出たところで困らせてしまうのではないか。または、拒否されるのではないか。と。」
トーマスはジョセフをじっと見ていた。
「わたくしは、おそらく2人は親子だと思っております。しかし、旦那様から言い出す事はないと思います。」
「何故ですか?」
「以前、旦那様が近くで静かに見守りたい。と。」
「そうですか。」
「わたくしは、旦那様の意思に従います。」
「それが間違った答えであってもですか?」
「……それはその時に考えます。今は、わたくしは旦那様の考えに従うしかありません。トーマス様もあの様な事を聞かされて、さぞ困惑されているかと思いますが…どうか旦那様が困った時にお力をお貸しください。」
ジョセフはそう言いながら、頭を下げる。
「少々長居し過ぎましたな。では、わたくしはこれで。」
ジョセフはまた静かに部屋を出て行った。
残されたトーマスは、ふぅと息をつきながらソファに沈むのであった。




