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【本編】お疲れ様、いただきます【完結】  作者: 山西音桜
second season
62/74

「うちの子たちいい子だなぁってしみじみしました」

「おはようございまーす」


 完全復活したこともあり、私は二日ぶりに出勤している。


「みな美さん! おはようございます!」

「おはようございます」

「え、人吉ちゃん来た?」


 いつも通り出勤すると、紗姫ちゃん、多瀬さんが休憩室にいて、その声に反応して有村さんがキッチンから顔を出した。まとめて挨拶をして、私も休憩室のソファに腰掛ける。


「多瀬さん久しぶりですね」

「あんまり被らないですよね」


 多瀬さんは昼に入って、夕方にはもういない人だったりする。逆に私は夕方、あるいは夜に出勤して深夜に帰る人だから、下手すると一ヶ月丸々会わないことだってある。まぁ紗姫ちゃんから嫌というほど話は聞いているんだけど。


「人吉ちゃん、大丈夫? もう一日くらい休んでも平気だったのに」

「いえ、もう完全復活ですよ。元気です」

「無理しないようにね。アーサー君にもお礼言っといて」

「はーい」


 いや、最後に一緒に働いたのが嫌な上司だったからか、有村さんがすごくいい人に見える。「無理しないでね」の一言だけなのに、こんなに染み入るとは恐れ入った。体調が悪いとか調子が悪いときに、労われると効くということは聞いたことあるけど、今身をもって実感した。


「あ、みっちゃんおはよー」


 バックルームにパーカーとジーンズというとてもラフな格好の上野さんが入ってきた。

 一応チーフ以上の人はスーツで出勤が原則義務付けられている。とても謎なルールだし、破ったところで何か罰則があるわけでもないけれど、うちの有村さん、上野さん、宵風さんはスーツで出勤している。だから、スーツでないということは、出勤でここにきたのではないという事。


「上野さん、おはようございます。休日出勤ですか?」

「ちがーうよ。先生とご飯行こうと思って誘っといたの。って、先生着替えてないじゃん何やってんの」

「すみません」


先生、というのは多瀬さんのあだ名だ。教師志望という事で先生と上野さんが呼び始め、それから上野さんと、有村さん、國橋君なんかは先生と呼んでいる。

上野さんに急かされて着替えるために更衣室へ移動する多瀬さんを見送りながら、紗姫ちゃんは「いいなぁ」と呟いた。


「紗姫も早くお酒飲めるようになりたいです」

「まぁそれでも先生との年齢差は埋まんないけどねぇ」


 上野さんそれは特大のブーメランじゃないですかねそれ、なんてことを思っていたら有村さんと目が合った。有村さんはやれやれって顔をしていたので、苦笑いを返す。紗姫ちゃんは気づいていないのか、「それを言わないでくださいー!」とちょっと向きになって上野さんに突っかかっている。

 紗姫ちゃんは宵風さんと上野さんが付き合っていることは知らないのだろうか。宵風さんが巧妙に隠しているのか、それとも紗姫ちゃんが鈍いのか。まぁ知らない方が宵風さんのためなんだろう。

 そんなことを考えているうちに、多瀬さんが更衣室から帰ってきた。上野さんが去り際に「あ

、みっちゃん」と呟いてこちらを振り返る。


「アーサー君に今度飲みに行こうって言っといて」

「はーい」


 多瀬さんもいなくなったので、紗姫ちゃんは「紗姫も帰ります! おつかれさまでした!」と、元気いっぱいに帰っていった。その後ろ姿を有村さんと一緒に見送った。


「そういえば、昨日紗姫ちゃんと、蛍ちゃんと菜々ちゃんがお見舞いに来てくれたんです」

「マジで?」

「そうなんですよ。プリンとかくれて、改めてうちの子たちいい子だなぁってしみじみしました」

「そっか」


 有村さんは一瞬黙って、少し考えるようにしてから私の方を見て、それはそれは優しい微笑みで、


「人吉ちゃんがうちのいい子の筆頭です」


 なんて言って、私の頭を撫でた。


「有村さんってお父さんみたいですよね」

「よく言われる」


 有村さんが照れ臭そうに笑ったのを見て、私も釣られて笑ってしまった。

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