「なんだ、皆そんなに私のこと好きだったの?」
朝ごはんを食べてもう一眠りした後、目がさめるとアーサー君のご飯が出来ていると思ったら、いないはずの人達がいた。
「みなみんおはよー」
「みな美さんおはようございますー」
「はよっす」
蛍ちゃん、紗姫ちゃん、菜々ちゃんの三人だった。
この狭い部屋には、女の子四人はさすがに多い気はする。アーサー君はどこに、というかいやいや。
「なんで?」
三人がここに。
そう言葉にすると菜々ちゃんが答えてくれた。
アーサー君から菜々ちゃんへジャンさん経由で連絡があった。蛍ちゃんが見舞いに来ると言ったのを私は断ったけど、是非来てやってくれ、と言うような内容。それが菜々ちゃんから蛍ちゃんに伝わった。そして二人が来るのはわかる。なんで紗姫ちゃんまで。
「なんかおまけも付いてきちゃってすいません」
「おまけって何ですかもー!!!」
なんだ勝手について来ちゃっただけか。
私は何のために蛍ちゃんのお見舞いの申し出を断ったんだろう。
移しちゃいけないし、そもそも……、そもそも?
「ちょっとまって、紗姫ちゃん菜々ちゃん、その辺の本棚にとりあえず触らないで、漫画のゾーン」
その中にはベーコンでレタスな本がたくさんたくさんあるのです。一応少女漫画でカモフラージュはしているけど、一冊でも抜き取ったら奥にも本があることはバレてしまうのでございます。そこにあるのは全年齢対象だけど、踏み込まなくていい場所はこの世にたくさんある。
「蛍さんにも言われてるから大丈夫です! 本棚って性格分析みたいなものだから、マジマジと見ちゃダメだって!」
蛍ちゃんナイスフォロー。心の中でグッジョブポーズを出す。
それを純粋に信じる紗姫ちゃんにもありがとう。
とりあえずロフトから降りる。やっぱりこの部屋に4人も集まるのは少し無理がある。部屋の狭さを実感しつつ、3人に座るように促した。お茶でも入れようと思ったけど、皆各々飲み物を用意してたみたいだった。
「皆今日休みだっけ?」
「あたしが深夜勤っす」
「わたしも夜勤」
「紗姫は休みです!」
現在夕方16時。蛍ちゃんの出勤まではもう少し、菜々ちゃんの出勤までは大分ある。
「ところでみなみん、お加減どう?」
「え? あ、うん。だいぶいいよ」
「みな美さん! プリン買ってきたんです、食べられますか?」
「うん、食べ、る」
「え、みなみんどうしたの? やっぱ具合悪い?」
歯切れの悪い私を蛍ちゃんが覗き込む。
「ううん、そんなわけじゃなくて、皆凄く優しい、いい子だなぁって」
三人は「何言ってるのこいつ」みたいな目で私を見る。
「だって、私のためにお見舞いとか……」
ただのバイトの先輩のためにお見舞いとか、普通は来ない。
こんなにいい子達私は見たことないよ。
「だってみな美さんだし」
菜々ちゃんがそう言って、蛍ちゃんと紗姫ちゃんがうんうんと頷いている。
私は、とてつもなく間抜けな声を上げる。
三人がなんで、そんな風に優しい笑顔で私を見ているのかがわからない。
「あたし割とシフト代わってもらってるし」
「紗姫はいつも相談乗ってもらってます!」
それは、いつもの癖で勝手にやってることで。そんなことしてるからってわざわざ来なくたっていいのに、面倒だろうし、風邪を引いてしまうかもしれないのに。
「みなみん知らない? わたし等結構みなみんの事好きだよ?」
知らない、そんな事は知らなかった。
だって、私は打算で皆に優しくしているようなものだから。
その言葉だって、嘘なんじゃないかって疑っているくらいなのに。
「だからさ、変に遠慮しないでよ。こっちが「見舞いに行っていい?」って聞いてるのに移しちゃうからとか考えないでさ」
バレていた。というかアーサー君が多分バラしたのだ。アーサー君のあの寂しそうな笑顔は、私の性格を理解している上での表情で。アーサー君は、私の事を考えてジャンさんに連絡を入れた。
「なんだ、皆そんなに私のこと好きだったの?」
なんて、そんな風に茶化して言わないと、私はうっかり泣いてしまいそうだった。
いい大人がそんな嬉しいから泣いてしまうなんてあってはならないと思うから、だから私は精一杯力を込めて、笑顔を作ったのに。三人とも、一瞬キョトンとしてから、笑いながら肯定するから、また泣きそうになってしまった。




