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【本編】お疲れ様、いただきます【完結】  作者: 山西音桜
second season
56/74

「寂しくなんかない」

久しぶりに家に一人でいる。

アーサーくんが来てからというもの、家で一人っきりでいる時間は滅多になかった。一人の時間がないと人は死ぬというけれど、私は一人でも生きていけるし、一人の時間がなくても生きていける。と、思っていた。


私は、一人の時間が長すぎて、そして私は一人の時に寂しいなんて思わなかった。

思わないようにしていた。寂しいなんて口にしたら、誰かに助けてって言いたくなってしまうから。そしてそうなると、私の中の冷静な私が尋ねてくるのだ。たった三文字だけれど私の心を揺さぶるには十分な一言。


「誰に?」


家族に助けを求めようとは思ったことはなかった。弟と、弟たちのために働いているお母さんに助けを求められるわけもなかった。

そして、私の友達は、あまりいない。

高校の友達も、大学の友達もLINEでつながっているけれど、誰とも密に連絡は取っていない。気を使うというのももちろんあるし、他人の私に対しての好意を私はどうしても疑ってかかってしまうから、それは失礼なことだとわかっていても、どうしても。だから、人と付き合っていても疑心暗鬼になるのならと、友達とは深い付き合いはできなかった。私は、友達にとって「その場限りの都合のいい人」であろうとした。「私はこの人にとって都合がいいから、一緒にいてくれるんだ」という理由ができたので、私は疑心暗鬼にならないで済んだ。そっちの方が楽だと思った。その楽さを取って、私は今一人で居る。


いや、アーサー君は傍にいてくれているのだけど。そのアーサー君も、今日は出かけている。私の代わりにバイトに行ったのだ。

私のスマホを勝手に使って、私を休ませる話を上野さんにしていた時に、じゃあアーサー君代わりに来てよ、という話になったらしい。アーサー君はそれを了承した。「わかった」とだけ返事をして電話を切ったアーサー君は、「行ってくる」と言って、財布と鍵を持って家を出た。見送りたかったけど、病人は大人しくしていろと言われ、本来アーサー君のものである寝床に横になっている。


「暇だ」


私は、家で一人でいる時どうしていただろうか。アニメを見て、イラストサイトに潜って、そしてそのままネットの旅に出て、時間を過ごしていたはずなのだけど、熱の頭にブルーライトは堪える気がしてスマホもパソコンも見ることができない。

かと言ってアニメを見ようとすると、最近アニメを一人で見ることはしていないからかアーサー君と一緒に見たいと思ってしまい、リモコンを掴むことさえしなかった。そして、眼前に転がっていた本を手に取ろうとして、英語が目に入ってきてやめた。今英語を和訳しながら話を理解する程頭は回らない。

何もする気が起きない。そして私の相手をしてくれる人もいない。とりあえず眠ろうとロフトの梯子に手をかける。


「アーサー君がいるから、もう思うことなんてないと思ってたのに」


眠ってしまおう。

 暇さから逃れられる。


ロフトに上がって、すぐさま布団に転がった。

この感情には目を向けない。すぐにアーサー君は帰ってくる。

大丈夫。大丈夫。


「寂しくなんかない」


 枕に涙が一粒落ちるけど、それはきっと熱のせいだ。寂しいからじゃない。アーサーくんがたった数時間いないだけでなんだと言うのだ。家の中でたった一人だからって、なんだと言うのだ。一人で留守番が寂しいなんてそんな子供じゃあるまいし。

 頭の中で自問自答をしていると、また私の中の冷静な私が顔を出して問いかける。


「本当に?」

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