「バラ三本なんて、キザな贈り物だよね」
家に帰ってくると、アーサー君が白々しく「そのバラ、どうしたんだ」と、聞いてくるので、笑いそうになりながら匿名のお客様にもらったことを説明した。それで「ふーん」という顔が笑っている。私が気づいていないと思っているのか、気づいていることに気づいているけど、サプライズ成功して喜んでいるのかはわからないけど。
「バラ三本なんて、キザな贈り物だよね」
少し意地悪で言ってみる。もちろんそんなことは思っていない。三本の花言葉を調べた時は流石にちょっとどうかと思ったけど、それでもまぁいいかなと思うことがある。一本でもよかったのに。
「嫌だったか?」
余裕だった笑みがふっと消えて、ちょっと不安そうな顔になった。私はそれで満足したので、首を横に振る。
「嬉しかったよ。ロマンチックだなぁとは思ってたし。でもどこに飾ろうか。うちに花瓶ないんだけど」
「ペットボトルとかでいいだろう。その相手もそんなに飾ることに固執はしてないだろうし」
他人事のように語りながら、アーサー君は台所で空になっていたペットボトルに少しだけ水を入れて持ってきてくれた。それを受け取り、テレビ台の上に置く。私がこの部屋で一番見るのはテレビだから、枯れるまでいつでも視界に入れることができる。それに、ちょっとテレビをバラで縁取ってるみたいでオシャレだ。
「こんな風に飾られるなんて、送り主は思ってないんだろうな」
「日本で花を贈るんだ。花瓶がある家の方が少ないだろう」
たしかに日本で生花を飾る家ってどれくらいなんだろう。お花は普通に値段が張るし、お家に飾るようにアレンジメントするとなると、手間もある。あと花粉という問題もあるし、日本には、母の日にはカーネーションをって言う風習はあるのに、おかしな話な気もする。
値段?
「アーサー君」
「なんだ」
「もしかしてさ、このためにアルバイトしてたりした?」
「な、に言ってるんだお前は」
一瞬アーサー君の言葉がつっかえた。バレてないと思っていたらしい。私もうっかり聞いてしまった。そして、唐突にアルバイトをすると言いだしたのもこのためだったんだ。アーサー君は、別にバラを三本買えないほど、貯金がなかったわけではないのに。
「アーサーく」
言葉を遮られる。アーサー君の人差し指が私の唇に触れた。アーサーくんはさっき少しだけ動揺したのも忘れたように、余裕そうな笑顔で、
「プレゼントについては、詮索しないのがマナーだろう?」
そう言った。手を私の唇から離し、踵を返してキッチンに向かう。あの余裕そうな笑顔と、キザな言葉にやっぱりちょっとムッとしたので、その背中に向かって私は一言言ってやった。
「やっぱりこのバラ、アーサー君からだったんじゃん」




