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【本編】お疲れ様、いただきます【完結】  作者: 山西音桜
second season
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「年越しそば?」

年が明けて。久しぶりのバイト休みだ。一日中ゴロゴロしていたいけれど、お年玉がわりのお給料を使うため、アニメショップさんに足を運んでいる。年末って発売するものが多いから。

買うものはメモしておくに限る、蛍ちゃんなんかはスケジュール帳に発売するものを記入していて、一ヶ月の出費を決めている。國橋くんは、ツイッターで発売日を確認してから買うタイプ。予約するときは予約するらしいけど。

私は二人の中間、と言った感じ。予約したものとかはカレンダーに記入してる。ツイッターで新情報入ったりしたら買いに行ったりもする。十二月は予約したものをお迎えに行くだけで精一杯だった。いまだに開封できていないDVDもたくさんあるし、今日もまた買い込まないとなので、帰ったら延々視聴会だ。


ところで、私は独り言がうるさいタイプだったりする。

小さい声で「あー、この新刊出てるけどどうしようかなー」とか言ってる人がいたら、それは私の心の友達なので仲良くしてあげるか、そっとしておいてあげてください。お姉さんとの約束です。とかなんとか蛍ちゃんあたりに言うくらいには、独り言がうるさい。


「おおー、外村くん成長したなぁー、CDとか出てるよー」


だとか。


「なんか新しいの開拓したいんだけどなぁ、なんかピンとこないんだよなぁ」


とかまぁ独り言を言いながら。一、二時間ぐるぐると決して広くはない店内を回る。面積としては大きいのかもしれないけれど、棚数が多いので狭く感じてしまうのはご愛嬌。

たっぷりと萌えを補充して、その代わりに財布の中身は失って、さぁお家に帰ろうと店外に出る。


「あのー」

「はい」


この街では知らない人に話しかけられることがよくある。大半は道に迷った人だから、私は声をかけられると自然に止まってしまうし、その人の方に目を向けてしまう。それを何度か母に言われたことはあるけれど、この性分がやめられなかった。というかこの性分じゃなかったらアーサーくんに会ってないのだと思うと、まぁいっかと思ってしまう。

今回の人は、チャラいとも言い難いし、根暗な人とも言い難い中間くらいの人だった。決しておじさんではない、と思う。


「どっか、二時間ぐらいゆっくりできるところ知らないですか?」


なんて抽象的なことをきくんだろう、喫茶店に行きたい、とかでもカラオケに行きたい、とかでもなくただ「二時間ぐらいゆっくりしたい」と。


「漫画喫茶もカラオケもここまっすぐ歩いたら、二軒くらいありますよ」

「そうですか、じゃあ一緒にどうですか?」


「じゃあ」とは。接続詞がおかしいよお兄さん。

こういうお兄さんに一言言いたいのは、青い袋を持った一人の人間に声をかけるな、だ。何のためにその青い袋を持っているのか、さっさと家に帰って鑑賞したいからだ。そのために購入したのに、わけのわからない人にチャチャを入れられることをほど腹がたつことはない。


「結構です」

「僕その、一人で暇で」

「私、暇じゃないんで。彼氏が待ってるんで帰りますね」


それじゃ、と目元は一切笑っていないであろう笑顔で、お兄さんにそう言ってその場を去った。


「ただいまー」

「おかえり」


さっきうっかり彼氏と言ってしまったけど、私はアーサーくんの彼女、なんだろうか。


「どうした、難しい顔をして」

「んーん、私らって普通の彼氏彼女じゃないから名称なんて言うんだろうなぁって」


さっきナンパっぽいことをされたことも語りつつ、リビングへとトコトコ歩く。


「ふーん」


あ、余計なこと言ったかな。これ。


「ナンパ、ね。まぁされないとは思っていなかったが、というかなんで俺を連れて行かない」

「え、だってアーサーくん寝てたし」

「起こせ」


私は寝てる時に起こされて、「買い物行くから付き合って」とか言われたら腹が立ってしょうがないので、人を起こさない。まぁ弟たちにも同じことを言われた記憶は確かにあるのだけど。そういうとまた怒られる。


「俺は、お前のものなんだろう。少しは甘えろ」

「いやぁ、あははー」


十分甘えさせてもらってるし。

だって、今日大掃除せずに買い物に行けたのだって、アーサーくんがこまめにお掃除してくれているお陰だし。これ以上何を甘えろというのか。


「とりあえず、お腹が空いたかな。今日の晩ご飯は?」


話をそらせるために、そんなことを聴くと、笑顔で「年越しそば」と帰ってきた。


「年越しそば?」


年越しそばなら食べたと私はアーサーくんに伝えたはずだし、私がバイトに行っている間に、アーサーくんもジャンさんと食べに行ったと聞いた。年が明けてから年越しそばを食べては行けないという決まりは、確かなかったと思うから食べてはいけないというわけでもない。けれど、なんでまた、と思わないではない。


アーサーくんは、蕎麦を茹でるためだろう、両手持ちのお鍋を棚から取り出して、


「『末永く傍にいられますように』という願をかけてお前と食べてないな、と思ってな」


と、こっちをみて笑った。

この吸血鬼はどんどん日本の文化に詳しくなっていくし、どんどんズルくなっていく気がする。

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