「もしかして、ヤキモチ?」
お風呂から上がると、アーサー君がノートパソコンで何やら調べ物をしていた。
ジャンさんの姿はない。 1時間もしない間に何があったの。
「あれー? ジャンさんは?」
「帰った」
「帰った? 国に?」
「いや、ホテルらしい。一週間ほどは滞在すると言っていた」
「そっかー」
てっきりうちに泊まるものだとばかり思っていたけど、そうじゃなかったのか。思えばこの部屋に三人が寝転がれるはずもない。私がロフトに上がるのを加味しても無理なものは無理だ。
「もしこの部屋が広く、ジャンが泊めてくれと言ったら、お前は泊めていたか?」
「うん」
多分。
断る理由もあまりない。そういえば吸血鬼ってお金あるんだろうか。
「ああ、ジャンは元々資産家の息子だったんだ。金は余っているさ」
「そうなの?」
あれ、でも資産家って言ってもそんな吸血鬼の一生を賄えるもの?
「それを元手に、情報を売るなりなんなりしている。だから、あいつの生活に関してお前が気にすることは何もない」
何か声とか言葉に棘があるんですけど。
「もしかして、ヤキモチ?」
なんちゃって。と口にしようとしたけどやめた。すぐさま赤い目でこっちをじっと睨まれて、腕をつかまれたから。
「ああ、そうだ。悪いか」
だいたいあいつは、とジャンさんの女性関係で起こった問題をつらつらとあげるアーサー君。確かにアーサー君とちょっと似てて、アーサー君より物腰は柔らかいけれども。そんなこと心配しなくてもいいのになぁ。
「それから「アーサー君」
まだ続きそうだった、ジャンさんへの悪口を遮って、私はアーサー君に抱きついた。
「心配しなくても、私は死ぬまでアーサー君のだよ。……アーサー君も私のだよ」
絶対、それは揺らがないよ。
言い終わるが早いか、アーサー君は私を力強く離したか、と思うと私の唇に噛み付いた。それは触れた感覚としてはキスと呼べるものだったと思うのだけど、けれど「噛み付いた」という表現でも間違ってないような気がする。そんなキスだった。
首の後ろをつかまれて、逃げられないようにされてる。
「ア……」
名前を呼ぼうと口を開けたのが間違いだった。少し開いた口に、アーサー君の舌が侵入する。待って欲しい。
これ、俗に言うベロチューという奴では。
なんて色気のないことを考えている間に、アーサー君の舌の侵入は進行している。
どうしたらいいかわからずに、アーサー君にされるがまま。生々しい音するなーとか、そんなことを考えながら彼のしたいようにさせる。
長いキスが終わって、今度は首筋に軽くキスされ、血を吸われるのかなと思ったけど、そうじゃなかった。吸われてるけど、それは血じゃない。皮膚だけこう、吸われてる感じ。というかアーサー君いつのまにパーカーのチャック下げてたんですかね。さすが年の功。こう言ったことはお手の物ですか。
「言っておくが」
満足したらしいアーサー君がようやく口を開いた。
「お前が唐突に引き金を引くからだぞ。あと少しは抵抗してくれ」
止まらなくなったらどうするんだ。
本当に止まらなくなっても、多分私はアーサー君を止めるつもりはないんだけど。それは黙っておくことにしよう。また怒りそうだから。
「安心した? アーサー君」
返事の代わりに、 アーサー君は今度はさっき、キスだけで済ませてた首筋に牙を立てて、私の血を吸った。




