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【本編】お疲れ様、いただきます【完結】  作者: 山西音桜
second season
44/74

「あとは若い二人でごゆっくり」

 過去の私に話しても信じてもらえないだろうなぁ、と思うけれど、現在私の部屋には二人の吸血鬼がいる。どうしてこんなことになっているのだろう。

 アーサー君を拾った頃の私もこうなるとは思っていまい。



 私は、現在、右側にジャンさん。目の前にアーサー君のご飯、そして私の真後ろにアーサー君がいるという構図の中にいる。

 というかアーサー君の足の間に私が座ってる感じ。どうしてこうなったのかは、よくわかってないけど背中が寒くないのでこの際いいということにしておいた。



「簡潔に報告してさっさと出ていけ」

「……ひどいなぁ。それはそうと気になっていたのですが、師匠? 何故そんな姿なのです?」

「え?」


 ジャンさんが何故アーサー君のことを師匠と呼んでるのも気になるけど、見たころのアーサー君と、私が出会ったアーサー君の姿が違うことの方が気になる。吸血鬼でもビジュアルがコロコロ変えられるなら、吸血鬼攻略キャラの乙女ゲームのイラスト担当の人はさぞ大変だろう。イラスト差分いくつ必要なんだ。


「日本ではこちらの方が何かと都合がいいというだけだ」

「だからって、何世紀分若返ったのです」


 若返る、ということはつまり?


「アーサー君って成長するの?」

「人間から吸血鬼になった者は、ジャンやリジーのように吸血鬼の血を飲んだ時の状態で成長が止まるが、俺のように生まれた時から吸血鬼だった場合は、成長の速度が遅いというだけで、成長もするし、老いもする。まぁ老いるまでが長いが」


 なるほど。


「ジャンさんが会った時のアーサー君ってどういう感じだったんですか?」

「君が思っているより、身長が二十センチは高かったよ」

「へぇ……」


 身長が二十センチも高くなったアーサー君を想像した、ただのイケメンだった。そして私はそんなアーサー君だったら話すときに首が疲れただろうと考えて、アーサー君が今の身長の状態で出会ってくれてよかったと思いながら、鍋焼きうどんに手を付ける。


「この状況で普通にご飯食べられるんだね、お嬢さん」

「もう慣れです」


 寒いと口にするとアーサー君は寄ってきて後ろから抱き着くという行為をよくするので、慣れてしまった。後ろから、「慣れて欲しくてやったわけではないんだが」って呟きが聞聞こえたけど、まぁいいやと流す。


「で、エリザベスさんはどうなったんですか?」

「ああ、そうだったね。イギリスに帰ってきて、師匠がかけた催眠が解けたらしい彼女が、知人だった僕に訪ねてきたんだよ」


 曰く、エリザベスさんはその後、ジャンさんにどうにか一緒にいてもらおうと、あれやこれやとアプローチをかけたらしい。けど、ジャンさんはエリザベスさんが今でいうところメンヘラ気質を持っていることを知っていたので、そういう相手がうまい、というか「誰かに必要とされたい」と思っている人にエリザベスさんを紹介したらしい。


「その人が死んだらどうするんですか?」

「そこは眷属にしなかった彼女の過失だと思う」

「……それもそうですね」


 ジャンさんも案外ドライだった。


「ところで師匠? 話し終わったんだったらさっさと帰れって睨んでくるのやめてもらえませんか、旧友みたいなものじゃないですか、僕ら」

「みな美がいなければそうしてた」


 ふむ、なるほど。

 では私はお風呂にでも入るとしよう。

 アーサー君の膝をぺちぺち叩いて、後ろからどいてもらって立ち上がる。


「あとは若い二人でごゆっくり」


 着替えを持って、リビングの扉を閉めるとアーサー君の突っ込みが聞こえた。

 

「お前が一番若いだろ」


 そんなことは気にしない。

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