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【本編】お疲れ様、いただきます【完結】  作者: 山西音桜
second season
33/74

Side:A それは、できればやめてほしいのだが。

 イギリス出身者からすると、少し寒い程度の感覚ではあるのだが、日本人にとってはそうではないらしい。

 

「今日は、鍋にでもするか?」


 LINEを開いても、夕飯の要望がない。それはつまりみな美の「何でもいい」のサインだった。

 そうはいっても、土鍋なんてものはみな美の部屋にはないのだった。どうしたものか。

 クリームシチューはこの間作ったから、今回はクラムチャウダーにでもしようか。

 そんなことを考えながら、鍋を取り出したところで、ガチャリ、と玄関から音がした。

 

「みな美?」


 時刻は18時を少し過ぎた頃だった。今日は17時インだからと部屋を出て行ったみな美が返ってくるのには早すぎたし、忘れ物を取りに帰ってくるには遅すぎる時間だ。

 扉が開く。もしかして空き巣というやつか。カーテンをいつでも閉めきっているから、人がいないと思われても仕方がない。

 オートロックなんてものは住人と一緒に入ってしまえば、大した問題ではない。


「ねえちゃーん、いるー?」


 少年の声と共に扉が開いた。普通はいるかどうかを確認してから部屋に来るものではないか。

 そんなことを考えながら、少年に一言声をかける。


「みな美ならいないが」


 少年二人。似ていることから双子だろうと予測ができる。茶髪と黒髪。黒髪の方は小さな女の子を連れている。

 そういえば、みな美は双子の弟がいるとか言っていたか、そして小さな女の子の方は再婚相手と母親の間に生まれた子供だろう。


「だ」


 茶髪の方が声を発した。


「誰だてめえええええええ!!!」


 こちらの台詞だ。







 とりあえず玄関で問答していると、近所に迷惑がかかるので、早々に部屋に入ってもらう。

 軽く自己紹介を済ませ、23時までみな美が帰ってこないことを告げると、帰ってくるまで待つと言われた。

 

「で、姉ちゃんとはどういう関係ですか」

「同居人、だな。一番しっくりくるのは」


 俺としては少し悲しいことに。まぁ今更彼女に何かを求めるわけではない。


「俺が家事をして、みな美が働いてくる、という契約で成り立っている」

「貴方は、仕事は」

「してないな」


 というかできないが正しい。


「何でですか! 普通姉ちゃんが家に居て、貴方が働くんじゃないんですか」


 随分と昔な考え方をする子供だ。

 みな美の弟だから、のほほんと考えているのかと思ったらそうでもなかったようだ。おそらく、彼女がしっかりしていないから、自分がしっかりしなければとしっかりしたパターンなのだろう。


「みな美がそういうことを、考えると思うか」


 あいつが家に居たら、アニメを見ることに時間を割くに違いない。

 否、最低限の家事はするとは思うが。


「お、もわないけど」

「おい、同居人って言ったな、あんた」


 茶髪、琉架の方が口を開いた。耐えきれないといった様子だったが、俺は構うことなくコーヒーを口に含む。


「姉ちゃんに変なことしてねえだろうな!」

「変なこと、とは」


 吸血していることは恐らく変なことに入るだろう。一般的に男女がすることではないのだから。


「だから、その」


 小さなレディがいるから言いよどんでいるのだろう。なら最初から言わなければいいのに。


「アーサーさん、単刀直入に聞きます。姉にそういう感情は抱いていないんですか?」


 黒髪、満の方がしっかりしているらしい。そういう感情というのは性的に発情するかそうじゃないかということなのだろうが。まぁどうとも取れる。


「抱いているさ。俺は彼女を愛している」

「なっ」

「だから、ここに居て彼女を支えることを選んだ。それでは答えにならないか? ミスター」

「……」


 そんな風にはっきりと答えられると思っていなかったのだろう。満は黙ってうつむいた。


「でも、彼氏じゃないんだろ。じゃああんたの片思いか?」

「そうなるな」

「姉ちゃんは知ってるんですか、貴方の気持ち」

「知っている」

「姉ちゃん……」


 まぁ、現代人がここまではっきり愛していると言っているのに、それに対して応えていないのはさすがにひどい仕打ちだと捉えるか。

 「普通」なら。


「俺もあいつも普通ではないから、今の関係で不満は両方持ってない」

「そうですか」


 それでも、と満は続けた。


「姉ちゃん、ここ三か月ほど連絡が取れなかったのは、貴方のせいだと考えます。だから僕は貴方を姉ちゃんの彼氏に近い存在だと思うことにします」

「そうか」


 それは別に構わない。


「なので姉ちゃんが帰ってきたら、貴方について問い詰めさせていただきます」


 それは、できればやめてほしいのだが。

 そうは思っていても、やめてはくれなかった。弟二人はみな美が帰ってくるや否や、俺とのことを問い詰め始めた。それでも、俺の欲しい言葉ではなかったけれど、彼女がどれだけ俺に頼ってくれているのかが分かったので、良しとすることにした。

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