「普通じゃないかもだけど、私今の生活で満足してるの」
「何してんの、満、琉架。花恋も連れてきて」
私の部屋にいたのは、弟の満と琉架。それから義理の妹の花恋だ。それから、申し訳なさそうな顔で縮こまっているアーサー君。アーサー君の様子を見るに、多分弟たちが怒っているのは私とアーサー君の関係についてだろう。
「姉ちゃんこそ何やってんだよ! こんな軽薄そうな男、家に連れ込んで! しかももう三か月くらい一緒にいるって?」
國橋君は黒髪短髪ではあるけど、雰囲気がチャラそうな感じ。こっちは茶髪で少し長い見た目からチャラチャラしている。こちらが双子の弟の方琉架。
「母さんに連絡くらいしなよ、彼氏ができたなら出来たって。母さん心配してたんだからね」
耳に掛かるくらいの長さでストレートのさらさらな髪を、九割くらい左に流している。えらそうな優等生口調が、満。そして何故かアーサー君の膝の上に座っているのが妹の花恋だ。
「琉架こそ、髪そんなに染めちゃって。校則は? 大丈夫なの?」
「今そんな話してないだろ姉ちゃん!」
話を逸らそうと思ってたらそうはいかなかった。
「しかもこの人働いてないんだって? そんなの姉ちゃんの彼氏として認められるわけないでしょ」
「別に満に認められる人が、私の彼氏としてふさわしいっていうわけではないから」
というかアーサー君は彼氏ではないから。
「やだ。姉ちゃんの彼氏は僕が認めた人間じゃないとダメ」
わがままか。
というかアーサー君人間じゃないんだけど、つまりアーサー君オールアウトなの?
「俺だってそう思ってるぞ! 姉ちゃんの彼氏は、俺と満で審査してふるいにかける!」
「私に今まで彼氏ができなかったのお前らのせいか」
「それは、姉ちゃんに出会いがなかったせい」
そこは正論で攻めてくるのか。
まぁ確かに、オタク女子に出会いはない。二次元にしか興味なかったし、男子が声かけてくる時って、漫画読んでるときに「何読んでるの」くらいだったし。大学は女子大だ。
「というか、私お腹空いたからご飯食べていい? アーサー君、ご飯」
「……わかった」
アーサー君、呆れた目でこちらを見るのをやめてくれないかな。
お腹空いたのは事実だし、勝手に押しかけてきた弟たちに気遣うことなんて私はしない。
「レディ、下りてくれ」
「ウン」
妹の花恋は六歳にしてはおとなしい女の子で、人見知りも激しい方なのだけど、やっぱり女の子だからイケメンは好きらしい。あとアーサー君の紳士っぷりも花恋を虜にするには十分だったようだ。
「っていうかどこで知り合ったのあんな男」
「アーサー君から聞いてない? ホームステイ先で知り合ったの」
「で、職失っておいてまだ何であの人働いてないの?」
「私が働くから、その分家事しててって私が頼んでるの」
「それでも、働こうって思うのが普通じゃないの」
「アーサー君も私も普通じゃないから」
満は本当に、真面目な優等生という思考回路だ。
琉架も見た目はチャラいし、同じような人間と関わってるけど、根っこの部分は満と一緒だったりする。この二人が育てる花恋の行く末が心配だ。
「普通じゃないかもだけど、私今の生活で満足してるの」
「姉ちゃん……」
アーサー君は吸血鬼で、私を好きで。
私は、アーサー君に恋愛感情は抱いていないものの、アーサー君を拠り所として傍に置かせてもらっている。そういう関係で私たちは落ち着いている。人にどうこう言われたくはない。
私のことを大事に思うなら、私からアーサー君を取り上げるようなことは、お願いだから言わないで欲しい。
「心配してくれてありがとうね、満、琉架」
ところで、三人が何故今日ここに来たのかというと、暇だったからというだけらしい。深夜上がりだったらどうしていたんだろうか。満と琉架だけで来たらよかったのに、お母さんが今日はいないからって花恋も一緒に連れてきたらしい。いつもは寝てる時間だろうから、花恋はもう船を漕いでいる。それを指摘したら力のある琉架が花恋を背負って帰っていった。
「何しに来たんだろう」
「この三か月連絡してなかったんだろう。心配してきたと言っていた」
「話したの?」
「五時間ほど」
そうか。
それほどの時間になるのか。何してるんだ暇か。
高校生暇か。というか花恋がぐずったりしなかったものだ。暇で仕方なかったろうに。
「何で私が夕方にいると思ったんだろうね」
「その辺は学生の感覚ということだろう」
土日が休みだと思っていて疑わない。
確かに学生の感覚だ。
「花恋は大丈夫だった?」
「宿題をしたり、部屋にある漫画を読んだりしていたな」
花恋が一番偉いじゃないか。
双子何やってるんだ。
「アーサー君、なんかごめんね」
「いい。それより腹が空いた」
そういわれて、私が食事をした後、彼に吸血された。




