買い物6
店主は目を細め、それからふと思い出したようにティナへ視線を向けた。
「ティナ?」
「はい?」
「先にマックスのところへ行ったんだろう?
彼は驚いていたんじゃないかい?」
「あー……」
ティナは肩をすくめる。
「……はは。分かりますか?」
「目に浮かぶようだよ」
店主はくすくすと笑った。
「うちの魔導書たちが、これほど騒ぐのは初めてだからね」
本棚の奥では、何冊かの本が、まだ小さく頁を揺らしている。
「先が楽しみだよ。
それじゃあ、気をつけて帰るんだよ」
「はいっ!」
「ありがとうございました」
二人は店主に見送られ、古書店を後にした。
*
その後も二人は、魔力触媒を扱う店や、魔法道具を並べた店を覗いていった。
道の途中には、見たこともない品物が所狭しと並べられている店もある。
「あ、こういうものは、幻惑魔法や防御魔法クラスの子たちが使ったりするよ」
ティナが指差したのは、瓶詰めにされた奇妙な素材だった。
「そうなんだ?」
「うん。触媒に使ったりするんだってー」
「へぇー……」
美緒は興味深そうに眺める。
さらに歩いていると、今度は魔法動物を扱う店が見えてきた。
店先には、干した薬草の隣に、見慣れない獣の角や骨など、何に使うのか分からない素材がずらりと並んでいる。
「これ……何に使うの?」
「えっとね。魔法薬とか、触媒とか……たぶん色々?」
「たぶんなんだ」
「だって私も全部は知らないもん」
二人は顔を見合わせて笑った。
店を覗き、時には立ち止まり、他愛のない話をしながら街を歩く。
ふと、美緒は行き交う人々へ目を向けた。
人間だけではない。
人間によく似た姿をしていながら、爬虫類のような、光を受けてきらめく鱗を持つ者。
頭に獣の耳を生やし、腰からふさりとした尻尾を揺らしている者。
額や頭に、小さな角を持つ者。
それぞれが当たり前のように街を歩き、笑い、話している。
美緒は思わず、歩みを緩めた。
(すごい……!)
胸の奥が、静かに高鳴る。
(初めて見る人たちばかり……!
本当に……違う世界なんだ……!)
そう思うと、美緒の口元には自然と小さな笑みが浮かんだ。
「ミオ? どうしたの?」
隣から、ティナがのぞき込む。
「あ……ううん」
美緒は小さく笑った。
「なんでもない。
……なんだか、すごく楽しいなって」
「そっか!」
ティナも嬉しそうに笑う。
「じゃあ、もっといっぱい見ていこうよ」
「うん!」
夕暮れの光が、街の石畳を淡く照らしていた。




