買い物4
マックスは呆然としたまま、震える声で呟く。
「ミオ、ちゃん……?
君は、一体……?」
やがて、ゆっくりとティナへ目を向ける。
「お、俺……初めて見たぞ!
精霊じゃなくて……精霊王様って……!」
声を上ずらせながら、両手を広げ、混乱したように何度も首を振る。
「一体、何が何だか……!」
けれどティナは、そんなマックスとは対照的に、きらきらと目を輝かせていた。
「すごいっ!」
頬を紅潮させながら、両手を胸の前で握りしめる。
「やっぱりミオはすごいっ!
はぁ……精霊王様を目の前で見られる日が来るなんて……!」
「おい? ティナ?」
「ふふっ」
困惑するマックスに、ティナは嬉しそうに笑った。
「説明するよ、伯父さん。
実はね、ミオはね……」
*
ティナの話を聞くにつれ、マックスの目はどんどん大きく見開かれていった。
ティナがすべてを話し終える頃には、その目は真ん丸になっていた。
「……なっ!」
しばらく口を開けたまま固まり、それからようやく声を絞り出す。
「せ、聖属性の力を持つ者だって?!
ミオちゃんが?!」
「そうなんだよー!
ちなみにバッジは虹だからね! 伯父さん!」
ティナが自分のことのように、嬉しそうに答える。
「に、虹っ?!」
マックスは力が抜けたように、へなへなと椅子へ腰を落とした。
「そうか……それなら納得だ……」
額に手を当てながら、深く息を吐く。
「……あんなに溢れる光を見たのは初めてだからな。
いや、本当に心臓が止まるかと思った……」
マックスは改めて、美緒の手にある杖を見つめた。
「ああ……それにしても……。
これは……凄いな」
その表情が、職人のものへと変わる。
真剣な眼差しだった。
「恐ろしいほどの力と、加護が宿っている……」
その瞳には、畏れさえ浮かんでいた。
マックスは表情を引き締めると、ゆっくりと美緒を見る。
「……ミオちゃん」
「はい」
「今言ったとおり、この杖には、膨大な力が宿っている」
マックスの声が、静かに店内へ落ちた。
「それこそ……悪意を持って一振りするだけで、国中が火の海になり、滅亡するほどの力だ」
「……」
重い言葉が、静かに落ちる。
美緒は杖を見つめた。
先ほどまで手の中にあった温かな光が、今は静かに眠っている。
「君の意思ひとつで、破滅への道にも、再生への道標にもなる」
マックスは、一度言葉を切る。
その目は優しく、声は穏やかだった。
「どうか、正しい心で使ってくれ。
……俺から言えるのは、それだけだ」
美緒はしばらく黙っていた。
やがて、杖をしっかりと握り直すと、まっすぐに頷く。
その瞳には、強い光が宿っていた。
「……はい、マックスさん。
お約束します」
その言葉に応えるように、杖がもう一度、淡く光った。
確かな力と、どこか懐かしい温かさが、美緒の手のひらへ伝わってくる。
その光は、どこまでも優しかった。




