買い物
「うん。学園の案内は、こんなとこ……かな」
ティナが満足そうに辺りを見回した。
「そうだな。
重要なところは、あらかた見ただろ」
隣を歩くシルヴァンも、穏やかに頷く。
校舎を一通り巡り、図書室や魔法実験室、食堂、中庭などを見て回った。
美緒にとっては、歩いているだけで胸が弾むような時間だった。
「だね! そしたら次は……」
ティナがぱっと美緒を振り返る。
そして、その腕を取った。
「お買い物、行こっ! 必要なもの買わなくちゃ!」
「お買い物……!」
その言葉に、美緒の顔も輝く。
「実はね、すごく楽しみなの!」
「分かる分かる! その気持ち、すっごく分かる!」
ティナは大きく頷いた。
「リストは私に任せて!」
そう言って、どん、と胸を叩く。
その様子に、シルヴァンが苦笑する。
「じゃあ、俺は寮に戻るよ。
二人で楽しんでこいよ」
「あ、いろいろありがとう、シルヴァン」
「いや、俺も楽しかったしな」
シルヴァンは軽く手を上げた。
「じゃあ、また後でな。
二人とも、夕食に間に合うように帰ってこいよ?」
「はーい!」
ティナは元気よく返事をすると、美緒の手を引いた。
「じゃ、行こっ! ミオ!」
「うんっ!」
二人は笑いながら、学園の門へ向かった。
*
学園を出ると、ティナがふと思い出したように尋ねた。
「ねえ、ミオ。ほうきは乗れる?」
「あ……ううん」
美緒は首を振る。
「ごめん、全然。
……っていうか、乗ったことないんだ」
「そっか。
じゃあ、一緒に乗ろっ!」
「え?」
ティナは楽しそうに笑うと、自分の指輪に触れた。
すると、指輪の表面に小さな魔法陣が浮かび上がり、淡い光が溢れ、その中から一本のほうきがするりと姿を現した。
「うわっ!」
美緒は思わず声を上げる。
それは普通のほうきによく似ていたが、柄の部分には細かな魔法文字が刻まれ、穂先には淡い光がまとわりついていた。
「すごい……」
「ふふっ」
ティナは慣れた様子でほうきに跨った。
「さあ、ミオ。乗って!」
「あ、う、うん……」
美緒は恐る恐る後ろに跨る。
「つかまっててね?」
「分かった」
「それじゃ――行っくよー!」
ティナの声と同時に、ほうきがふわりと浮かび上がった。
「わあっ!」
次の瞬間、二人の身体が空へ引き上げられる。
足元から地面が離れていく。
心臓が、どきんと跳ねた。
「すごい! ティナ!」
眼下に学園の建物が広がり、街並みが少しずつ小さくなっていく。
「ふふっ! ありがと!」
ティナは嬉しそうに笑った。




