双月の学び舎へ10
「入学者にはね、その能力に応じたバッジを、塔が与えるの。
魔法の適性とか、魔力量とか、いろんなものを見て決められるみたい」
「へえ……」
「私が今まで見た中では、金色が最高だったけど……」
そこでティナは、うっとりと目を細めた。
「そっかぁ……虹色かぁ……!」
「…………」
美緒は何と言えばいいのか分からず、ただティナを見つめる。
「虹色のバッジを持つ、唯一の聖属性を持つ者が友人なんて……!」
ティナは、両手を胸の前で握りしめた。
その頬が紅潮していく。
「きゃー、どうしよう!
嬉しくて鳥肌立ってきちゃったー!」
「おい、落ち着け、ティナ」
シルヴァンが呆れたように言う。
するとティナは、びしっと人差し指をシルヴァンへ突きつけた。
「これが落ち着いていられる?!
虹色だよ?! しかも聖属性だよ?!
なんでシルヴァン驚かないの?!」
「いや、俺も驚いてるからな?
……にしても」
シルヴァンは苦笑する。
「ほんと、ティナは魔法オタクだからなぁ……」
「言い方ね?!
研究者か、探究者って呼んで!」
「事実だろ」
「むぅ……」
二人のやり取りを見て、美緒は思わず吹き出した。
「ふふっ」
「ミオまで!」
「ご、ごめん。でも……なんだか面白くて」
ティナは頬を膨らませたものの、すぐに笑った。
そんな二人を見ながら、美緒はふと尋ねる。
「あ、ところで、二人はどんなクラスなの?」
「ああ」
シルヴァンが答えた。
「俺は攻撃魔法クラス。
これでも一応、魔弾の射手なんだ」
「魔弾?の射手……?」
「遠距離から魔法を撃つのを得意としてるんだ。バッジは金」
「すごい……」
美緒が感心していると、シルヴァンは隣を指した。
「ティナは――」
「はい!」
待ってましたとばかりにティナが手を上げる。
「私は付与魔法クラスだよ!
私もバッジは金なんだー」
「そうなんだ……」
美緒は二人を見つめる。
「二人とも、すごいんだね……」
「えー?」
ティナが目を丸くした。
「ミオがそれ言っちゃう?」
「それな」
シルヴァンも即座に頷く。
「えー?!」
今度は美緒が声を上げる。
三人の笑い声が、廊下に柔らかく響いた。
窓の向こうでは、木々の葉が風に揺れている。
「ミオ、次は図書館見よう!」
「うん!」
「その前に食堂だろ?」
「あっ、それもいいね!」
「ふふっ」
三人は笑い合いながら、明るい廊下を歩いていく。
美緒の新しい学園生活は、こうして少しずつ、その輪郭を形にしていった。




