双月の学び舎へ9
「えーーーーーーっ?!」
ティナの声が、静かな校舎に響き渡った。
鳥が一羽、驚いたように飛び立っていく。
廊下の窓から差し込む光が、驚きに大きく見開かれたティナの瞳を照らしていた。
「せ、聖属性……?
失われた力を、ミオが……?
う、うそ……!」
ティナは口をあんぐりと開けたまま、完全に固まっていた。
その隣では、シルヴァンが目を見開きながら、美緒を見つめている。
「……すごいんだな、ミオ。
まさか、聖属性を持つ者に会うことができるとはな……」
「あー……はは」
美緒は困ったように笑った。
「でも、自分でもよく分からなくて。
どうやったら使えるのか、とか……全然」
そう言うと、シルヴァンは少し考えるように顎へ手を添えた。
「ああ。魔力制御の問題か」
「魔力制御?」
シルヴァンは頷いた。
「まずは自分の魔力を認識するところからだな。
まあ、その辺は学びながら、徐々に身につければいいんじゃないか?」
その自然な言葉に、美緒は少しだけ肩の力を抜いた。
「そっか……。
そう言ってもらえると、なんだか安心するな」
「最初から何でもできる必要はないだろ」
「うん……」
その言葉が、今の美緒には嬉しかった。
聖属性。
塔が認めた特別な力。
そう聞かされても、自分の中に何があるのか、美緒自身にはまだ分からない。
ただ、少しずつ覚えていけばいい。
そう思えるだけで、胸の奥が軽くなった。
*
「聖属性……」
隣から、呆然とした声が聞こえる。
「ミオが……聖属性を持つ者……」
「おい、ティナ?」
シルヴァンが心配そうに顔を覗き込む。
「大丈夫か?」
「…………」
シルヴァンが声をかけると、ティナはぱちぱちと瞬きをした。
そして突然、何かを思い出したようにぱっと顔を上げる。
「そうか!」
「うわっ」
突然の声に、美緒がびくっとする。
「今日見た虹色のバッジは、ミオのものだったんだね!」
「おい、虹色のバッジだと……!」
シルヴァンの声に、驚きが混じった。
「それって、あの――」
「そう!」
ティナは美緒の肩に、がしっと両手を置いた。
「塔が認めた、最高位の魔法使いっていうことだよ!」
「え……」
美緒は目を丸くする。
「さ、最高位の魔法使いって……?
私は、まだ何も……」
「ううん! そうじゃないの!」
ティナはぶんぶんと首を振った。




