双月の学び舎へ7
モリーに案内され、学園の赤い尖塔を背にしてしばらく歩いた先に、魔法学園の寮はあった。
淡い石造りの壁に、蔦のような植物が絡みついている。
庭には、かわいい小さな花が植えられていた。
入り口の前に、一人の女性が立っていた。
ふくよかな体つきに、柔らかな笑顔。
温かな雰囲気をまとっている。
「お待ちしておりました、学園長様」
「まあ、ハンナ」
モリーが嬉しそうに微笑む。
「こちら、お伝えしたミオさんです」
ハンナと呼ばれた女性は、美緒を見ると、柔らかな笑顔を浮かべて丁寧に頭を下げた。
「ミオさん、ようこそ、魔法学園寮へ。
私はこの寮の管理者をしております、ハンナと申します」
「ハンナさん、初めまして。
ミオ、です。どうぞよろしくお願いします」
美緒も丁寧に頭を下げる。
「まあまあ、ご丁寧に」
ハンナは嬉しそうに目を細めた。
「さあさあ、どうぞ。中へ入りましょう。
お部屋へご案内いたしますね」
促されるまま、二人の後について寮の中へ入る。
扉を開けた瞬間、ふわりと暖かな空気に包まれた。
広い玄関ホールには、大きな暖炉があった。
その隣には、大きな時計が置かれている。
振り子がゆっくりと揺れるたび、時計の文字盤に小さな光が走った。
その上では、小さな魔法灯がいくつも浮かんでいる。
壁には寮生たちの掲示板や、季節の花を描いた絵が飾られていた。
木の階段はつやつやに磨かれ、手すりには淡い光を帯びた魔法石が一定の間隔で埋め込まれている。
廊下の奥からは、誰かの笑い声も聞こえてきた。
美緒は思わず辺りを見回す。
「すごい……! 素敵……」
「ふふ。
ここは生徒さんたちが帰ってきて、ほっとできる場所でありたいと思っていますからね」
ハンナはそんな美緒の様子を微笑ましそうに眺めながら、階段を上っていった。
「ミオさんのお部屋はこちらです」
鍵を取り出し、扉を開ける。
「わあっ……」
そこは、こじんまりとした、居心地のよさそうな部屋だった。
窓際には小さな机と椅子があり、その隣には本棚。
壁際にベッドが置かれ、白いシーツの上には、ふかふかの毛布がきれいに畳まれている。
窓辺には、淡い色のカーテンがかかっていた。
窓からは中庭の木々が見え、光が柔らかく差し込んでいる。
机の上には、羽ペンとノートがきちんと揃えられ、小さな花瓶に白い花まで飾られていた。
「ありがとうございます! すごく素敵……!」
「お気に召していただけましたか?」
「はい!」
ハンナが嬉しそうに頷いた。
「それはよかったです」
その様子を見ていたモリーも、穏やかに微笑む。
「制服などは、後ほど届けさせますね」
そう言ったところで、モリーがふと階下へ目を向けた。
「あら……階下にティナさんと、シルヴァンさんの気配がしますね」
そして、二人に微笑む。
「では、ミオさん、ハンナ。私はこれで」
「はい。学園長様、ありがとうございました」
「モリー先生、ありがとうございました!」
美緒も頭を下げる。
モリーは優しく頷いた。
「何かあったら、遠慮なく言ってくださいね、ミオさん」
「はい!」
モリーが廊下を去っていく。
その直後、開いたままの扉のところから、ひょこっと少女の顔が覗いた。
「あ、ティナ?」
「わあっ! ここがミオの部屋なんだね!」
ティナが嬉しそうに中を覗き込む。
「私、隣なんだよ!」
「そうなの?」
美緒の顔がぱっと明るくなる。
「それはとっても心強いな」
「えへへ」
ティナは照れくさそうに笑った。
「じゃあ、シルヴァンと下で待ってるから、落ち着いたら来てね!
学園の案内するから!」
「うん! ありがとう!」
ティナが手を振って、階下へ戻っていく。
美緒は部屋をもう一度見回した。
自分の部屋。
今日からここが、自分の居場所になる。
そう思うだけで、不思議と胸の奥がわくわくした。




