双月の学び舎へ4
「は、はい!」
美緒は慌ててその手を握った。
「は、はじめまして。
ミオ……です。よろしくお願いします」
「まあ、可愛らしい方ね、エルファル?」
モリーが微笑む。
「えっ……」
美緒の頬が、たちまち赤くなった。
そんな様子を見て、エルファルも嬉しそうに目を細める。
「ええ。本当に可愛らしくて、素直なお方なの」
頬が一気に熱くなる。
俯く美緒に、エルファルはどこか楽しそうに微笑んでいた。
やがて三人がそれぞれ腰を下ろすと、エルファルが改めて口を開く。
「モリー。
先日、月渡りで来られたことについてはお話ししたと思うけれど……」
「ええ、聞いているわ」
モリーが頷く。
「実は先ほど、属性検査を行ったの」
エルファルはそう言って、美緒へ視線を向けた。
「そして――ミオさんは、類まれなる聖属性の力を持っていることが分かったわ」
「聖属性……!」
モリーの目が大きくなる。
その表情が変わった。
「それは……本当なの?」
「ええ」
エルファルは静かに続ける。
「魔水晶に触れた瞬間、白銀の光が溢れ出して……魔水晶が砕けてしまったの」
「魔水晶が……砕けた、ですって!?」
モリーが驚いたように目を見開く。
「そんな……」
「それだけではないわ」
そして、確認のために自らの手を剣で傷つけ、美緒が治したこと。
「傷は、跡形もなく消えたの」
エルファルが静かに告げる。
「血が止まったとかじゃないの。
傷つく前と何も変わらないほど、きれいに」
エルファルは微笑んだ。
「……!」
モリーはしばらく言葉を失った。
やがて、その瞳がみるみるうちに輝いていく。
「本物の……聖属性の力……」
そして、次の瞬間。
「ああ! そんな方にお会いできるなんて!」
モリーは勢いよく立ち上がると、顔を輝かせて美緒の両手をはしっと掴んだ。
「ミオさん、ようこそ魔法学園へ!
困ったことがあったら、何でも言ってくださいね!
私にできることなら、何でもお手伝いしますから!
そして、リクヴァイン様も、ようこそお越しくださいました!」
「え、あ、は、はいっ!」
『……ああ』
反射的に返事をした、美緒の頬が引きつった。
――なんだろう。
このやり取り。
どこかで経験したような気がする。
「えと、あ、あの……これからよろしくお願いします!」
美緒がなんとか笑顔を作ると、モリーは満足そうに、うんうんと深く頷いた。
そしてようやく、その手を離す。
美緒はほっと息を吐くと、隣にいるリクへそっと顔を寄せた。
「ねえ……リク……」
『なんだ?』
「モリー先生って……もしかして……?」
リクはちらりとモリーを見てから、静かに頷いた。
『ああ。エルファルの妹だ』
「やっぱりー……っ!」
思わず、小声で叫ぶ。
姉妹そろって、この勢い。
美緒がなんとも言えない顔をしていると、モリーはにっこりと微笑んだ。
「では、ミオさん。まずは寮にご案内しますね」
「寮……!」
美緒は、ぱっと顔を上げた。
不安も、緊張も、その一瞬だけどこかへ飛んでいく。
「はい!」
リクは美緒を見上げ、ふっと笑った。
『行くか』
「うん!」
黒猫の尻尾が、ふわりと揺れた。
美緒は胸の奥を小さく弾ませながら、モリーの後について歩き出した。




