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天楼千重波、甘美な音
「えっ……と、ここは何処ですか」
さっきまで路地裏を通っていたのに、いきなり人の雑踏で溢れかえり、食べ物の匂いがするはずが無い。
「ここはカントーよ、君は何処から来たのかな?」
耳元でお姉さんに囁かれるように聞かれ、耳がゾクゾクとし、頭がクラクラしてきた。
「埼玉です」
お姉さんはうーんとしきりに唸り、首を傾げて悩んでいる、その声すらも甘くトロけるような声だった。
「凄く遠くから来たのね、キミはカントーを知ってる?知らないなら案内してあげましょう」
腕を捲り力こぶを作っているのだろう、頼りになる印象より服の着崩れの音にドキドキとしてしまった。
「えと……お願い……します」
「よしきた!」とお姉さんが言うと腕を掴み、道を先導してくれ数分歩いただろうか、音楽の授業で聞いた三味線や琴や太鼓の音が聞こえてくる。
「坊やは運がいいね、今日はシンシューから来た人が演奏してるんだよ、どうだい楽しいだろ」
地域の祭りに参加した時に太鼓や笛の音を聞く事は何度かあった、だがこんなに近くで聞くと太鼓の衝撃、祭りの人の声が笛の音や三味線と混じり、楽しい気分になっ来る。
「楽しいです」
音楽を生で聞いて、始めて楽しいと思えた。




