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8月短編集  作者: 天雲 律
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13/21

天の音

ふと百人一首の一部を頭に思いうかべる。

『天つ風雲の通ひ路吹きとぢよ をとめの姿しばしとどめむ』


彼女は耳が良かった、隣に座るだけで僕の心音を聞き取る程だった、彼女は世界の全てがうるさかったのだろう、だから空に導かれた。


彼女と僕の関係はただ旅先であった人だ。


「大丈夫ですか?」


ロープウェイに乗り高さに震えそうな体を抑えていると話しかけられ、世間話をした……ただそれだけ。


耳がよく困っている人は音で分かるらしい。


「私、最後はここが良かったんです」


僕は心配になり一緒にロープウェイを降り、ラーメンを食べた。


その後も一緒に山に登った、山頂に着くと彼女は空の音に導かれ僕の前から姿を消した。


夏が始まる少し前の不思議な出会いだった。


きっと、彼女は天女だったのだろう


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