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巻き込まれ宇宙人の異世界解釈 ~エリート軍人、異世界で神々の力を手に入れる?~  作者: こどもじ
七人の子編

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復興の兆し


 「少し離れていてくれ! そこの廃墟を切り崩すぞ!」


 ダンはそう指示した後、あらゆる重機の機能が一つに統合された、マルチプルワーカーを駆使して、焼け落ちた廃墟を切り崩す。


 復興するにも廃墟の残骸がいつまでも残っていては、進むものも進まない。


 残っている建物はそのまま使い、もはや使えないものは、アームで掴み潰してどんどん更地に変えていった。


「む……また遺体が出てきたか。エリアスくん、彼らを外に運び出してやってくれるか?」


「はは! 天にまします我らが御主よ、どうかこの哀れな御魂を救い給え……」


 そう言ってエリアスが祈りを捧げたあと、避難民たちが協力して遺体を運び出していく。


 先の動乱ではかなりの数の被害が出てしまったらしく、瓦礫を掘り返すたびにゴロゴロといくらでも死体が出てくる。


 その始末も疎かには出来ない。


 今はまだ事件から一週間ほどしか経ってないのでそれほど腐敗していないが、これがあと二週間も経てばひどいことになっていただろう。


 遺体を放置してネズミや害虫が大発生でもしたら、それこそ黒死病(ペスト)の大流行などの歴史的な大惨事が起きてしまう。


 よって見つかった遺体は一箇所に集めて、後で一斉に焼き払うしかなかった。


「やれやれ……ようやく三分の一といったところだな。皆、一旦食事にするか。残りは午後からにしよう」


「はい、畏まりました。預言者様」


 ダンがそう言うと、避難民たちもぞろぞろと広場に戻っていく。


 皆いくつも悲惨な死体を見て物憂げではあるものの、しっかりダンの命令に従って作業している辺り、ダンに頼るばかりではなく本当に復興させる気はあるようだ。


 広場では女性陣が食事の支度をしており、何故かその手伝いをしていたランドルフたちが出迎えた。


「おお、首領殿! 一息つかれますかな? ちょうどこちらから呼ぼうと思っておった所です」


「これは……すいません殿下。客人のあなたにまで作業を手伝わせてしまうとは」


「いえいえ、お気になさらず。我もフリックと二人旅をしておった頃は、互いに交代で炊事の一つなどこなしておったもので、お陰で結構上手いものですぞ?」


 そう言って、ランドルフはナイフでショリショリと手のジャガイモを器用に剥いていく。


「ちょっとダン! 私たちも手伝ってるんだけど!?」


「そう……私たちのことも、ちゃんと褒めなきゃ、ダメ……」


「ははは! そうだな、すまん。二人がいてくれて私も助かっているよ」


 姉妹でアピールしてくる二人に、ダンは笑いながら答える。


 なんだかんだでシャットとリラの二人も、言葉は通じていないが避難民とそれなりに上手くやっているようだ。


 未だ異種族に対する偏見はありそうだが、少なくとも互いに歩み寄る姿勢は見せている。


「しかし、首領殿の持ちこまれた作物は見たこともない珍しいものばかりですな。このイモといい、このコメ? ですかな。帝国では見たこともない作物ですぞ」


「米を作っているのはこちらでは魔性の森くらいですからね。ですがそれは私が品種改良した種なので、美味しく食べられると思いますよ」


「ほほう、それは楽しみですな!」


 ダンの言葉に、ランドルフは興味深そうに目を輝かせる。


 実際にダンが持ち込んだ食料は、(オーガ)族の里で作った米の他に、ジャガイモや乾燥大豆、あとは干しシイタケや漬物などの保存の効く加工食品も含まれる。


 これらは大抵ダンの出身星である地球由来のものなので、こちらの現地人からは物珍しく映るのだろう。


「ところでこの……失礼ながら少し臭うこの樽は何ですかな?」


「ああ、それは"味噌"と"醤油"ですよ。潰した豆を発酵させて作った調味料で、独特な臭いがしますが、慣れれば保存も効くし味も癖になるんです。身体にもいいし、とても優れた調味料なんですよ」


「ううむ、なるほど……。我が国にも魚の塩漬けから作る魚醤(ガルム)というものがあります。それと似たようなものなのでしょうな」


 ランドルフは納得したように頷く。


 やがて全員分の食事が出来上がると、ダンも含めてそこらの瓦礫に腰掛けながら食事を始めた。


「うむ、椎茸ご飯と芋と豆の味噌煮か。なかなか上手く出来ている」


「はい! 預言者様から教わった料理を作ってみましたところ、すごく美味しく出来ました」


 そう言って、調理担当の女性陣からも好評の声が上がる。


 かなり大量の食料を持ってきたので、分け合っても十分に全員の腹を満たすことが出来るだろう。


 しかし、毎回ダンが食料を運搬して養ってやる訳にはいかない。


 どうにかして彼らだけで自活して貰うためにも、生活出来る道筋を立ててやる必要があった。


「そういえば……この聖都には元々なんの産業があったんだ? 私が以前ここを訪れたときはかなり賑わっていたが、名産品などはあまり知らなくてな」


 ダンはエリアスにそう尋ねる。


「ああ、それは……かつてこの都市は、周辺諸国からの寄進と、闘技場や聖教会への巡礼などの観光収入のみで成り立っていました。しかし都市がこのような状態になって、今後どうなるか……」


「なるほど……つまり都市としての生産力は皆無に等しいということだな?」


「恥ずかしながら、その通りにございます」


 その言葉に、エリアスは深く頭を下げながら答える。


 ダンの故郷である地球にも、かつてそう言う都市が存在した。


 ドバイという、オイルマネーからの出資金と貿易、観光収入のみで大きく発展を遂げたメガロポリスのことだ。


 かの都市は栄華を極め、世界中から上位層が集まるきらびやかな場所であった。


 あれこそまさに、資本主義という神を崇めている点では、この聖都と似ている場所だった。


 しかし二十一世紀の中頃、フリーエネルギーの発見と資本主義経済の崩壊により勢いは失われ、今やその都市は巨大なゴーストタウンとなっている。


 結局のところ、その都市自体に生産力がなければ繁栄は長くは続かないという教訓を残す歴史的なモニュメントとなってしまった。


「食事を終えたら、後でこの都市をどう活かすか考えねばならんな。幸い周辺の地形は平らで悪くないので、何かしら作れるとは思うが……」


「ふーむ、周辺地形は恵まれておりますからな。作物も作ろうと思えば何でも作ることができるでしょう。……しかし、この地を再興させるのも大事ですが、周辺諸国の動向にも気を配らねばなりませんぞ」


「? どういうことですか?」


 ランドルフの言葉に、ダンは尋ねる。


「この聖都は宗教的に重要な意味を持つ都市です。なにせ世界を創り、魔法の力をもたらした聖なる神が直接降り立った聖地とされておりますからな。聖教会を信奉している国が、この都市を保護という名目で併呑してしまえば、他の信仰国に対して圧倒的に優位な立場に立てます。今はまだ崩壊して間もない故に周辺諸国は動いておりませんが、目敏い国々などは既に情報を掴んで、侵攻の準備を始めておるやも知れませんぞ」


「なるほど……確かにそれはありますね……」


 その言葉に、ダンも確かにと納得する。


 日本の戦国時代にも、京都に上洛した武将が帝を保護して天下に号令をかける強大な権限を与えられていた。それと似たようなことなのだろう。


 元々無信仰なダンでは、宗教的な視点に欠けていたが、いち早くその動向に気付くランドルフはやはり英邁と言えた。


「ならば防衛のことも考えねばなりませんね。……エリアス、お前はここの避難民の中では皆から慕われ、頼りにされている指導者的な立ち位置だ。そこでお前に聞きたい」


「は、はい! 私に、ですか?」


 ダンに突如として尋ねられ、エリアスは驚きながら聞き返す。


「お前はどうすべきだと思う? このまま私の下で復興を進めるか、それともどこか他の国の保護下に入るか。私はどちらでも構わん。お前たち皆がそう望むなら、私はここから手を引いて、どこかまともそうな国に保護してもらえるよう交渉してやっても構わないが……」


「い、いえ、そんな! 我らは預言者様と共に在ります!」


「そうです! どうか見捨てないでください、預言者様!」


 エリアスと避難民たちは慌てたように言う。


 ダンとしては領地や宗教的権威など元より欲してはおらず、聖教会本部の中枢機能さえ抑えられたら何の問題もない。


 ただ難民たちの行く末が哀れだったので面倒を見ているだけの話だ。


 彼らが望むなら自分たちの好きにさせてやるつもりだが、他ならぬ本人たちがダンの庇護下に入りたいと言うのなら仕方がない。

 

「分かった。ならば引き続き私がこの地を守護しよう。他所から攻め込んでくる国々にどう対処するかも考えねばならんな……」


「ふはは! 真に王たる器があれば、武力をもって征服などせずとも民と領地が自ら支配されに転がり込んでくるものなのですな。我が父や上の兄者二人に今の光景を見せてやりたいものです」


 ランドルフが上機嫌に笑いながらそんなことを言う。


 ダンはそれを苦笑交じりに否定しながら、今後聖都の開発と防衛について思考を巡らせた。

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