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巻き込まれ宇宙人の異世界解釈 ~エリート軍人、異世界で神々の力を手に入れる?~  作者: こどもじ
七人の子編

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神の代行者


 「さて、では出発しましょうか」


 ダンがそう呼び掛けると、ランドルフとフリックも頷いて船に搭乗する。


 既に格納庫には食料や荷物等も運び込んでおり、出立の準備は整っていた。


「ちょっと、ダン! また私たちは置いてけぼりなの!?」


 そう言って出発間近になって、何処からともなく聞き付けたシャットがダンに抗議する。


「おいおい、遊びに行くんじゃないぞ? 今から行く所は、化け物に襲われてそれなりに被害や犠牲者が出ているところだ。ワイワイ騒ぐ訳にもいかないし、行って楽しむような場所じゃない」


「それでも、行きたい……。前回は留守番だったんだから、今度は私たちも連れて行って、欲しい……」


「そうよ! 前回置いていかれた埋め合わせだってしてもらってないわ!」


 そう言って出立前にせがむシャットとリラに、ダンはうーん、と懊悩する。


 まるで出張前に子供に止められるお父さんのような気分だが、まあせっかくだし、被災地に連れて行くのもいい経験になるかと思い直す。


「分かった。だがくれぐれも向こうで騒いだりするなよ。皆落ち込んでいるかも知れんからな」


「それぐらい分かってるわよ!」


 そう胸を張るシャットに、一体どれだけ理解しているのやらと不安に思いつつも、同行を許可する。


 その後、魔性の森の住人たちに見送られながら、その場を飛び立った。


「最初はその南大陸にあるという、黒妖族の集落から向かうのですか?」


 そう尋ねるランドルフに、ダンは答える。


「いえ、まずは西大陸(ネウストリア)の聖都に向かいます。大勢の難民が居ますし、あそこが一番被害状況が酷いですからね。早く食料も運んでやらないと大量の餓死者が出てしまいます」


「ううむ……あの火災の跡を実際に目の当たりにする訳ですな。そろそろ冬を越す時期になりますし、避難民にはなかなか辛い季節になりそうですな」


「一応死者が出ないようにはするつもりですが、そこからどうするかは彼ら次第です。流石に私も一から十まで面倒を見てやる事は出来ませんから」


 ダンはそう告げたあと、西大陸に航路を取る。


「しかし、ここから西大陸の聖都までわずか三日で辿り着くとはにわかに信じ難いですな。無論、首領殿のお力を疑っているわけではないのですが……」


 ランドルフはダンから旅の日程を告げられて、信じられぬような口調で言う。


 ダンにとっては近所を散歩する感覚でホイホイ大陸を行き来しているが、現地人の感覚から言えば帰れぬことも覚悟するレベルの大冒険である。


 ましてや東大陸から真反対の西大陸など、二つの大陸を跨いで半年以上かかるのだからそう感じるのも無理はなかった。


「いえいえ、三日というのは向こうで滞在する日数も含めてのことです。聖都に行くだけなら半刻も経たずに着きますよ。瓦礫の撤去などの作業も含めての時間ですから」


「は、半刻……!? ここから西大陸へ!?」


「というより、既に中つ海(なかつうみ)に入ってますから正確にはもっと短いですね。お茶の一杯も楽しんでいる間に着きますよ。まあゆっくり待ちましょう」


 そう言って、ダンはランドルフとフリックのティーカップに紅茶を注ぎ入れた。


 中つ海とは東西南北四つの大陸の中央に位置する広大な海のことだ。


 その中心部に当る海洋極点(ポイント・ネモ)には、かつての水の館(エアブズ)が眠っていたが、今となっては何もない、不毛の海だ。


 帆船で渡るにはあまりに過酷な場所と言えた。


「……もはやこの世界は首領殿にとっては箱庭に等しいですな。まさか反対側の大陸まで一日足らずでひとっ飛びとは……」


「殿下、もう今更でしょう。見た目こそ大きく変わりませんが、首領殿は我らと違う次元の生き物だと考えたほうが宜しいでしょう」


「そんなことはありませんが……」


 呆れたように肩をすくめる主従二人に、ダンは困惑しながら答える。


「ちょっと! あんたたち私たちがいつも使ってたベッド、後から来た分際で勝手に占拠すんじゃないわよ!」


「シャットの、言う通り……私たちの縄張り、勝手に荒らさないで……」


「そもそもここは君らの縄張りではなく私の船なんだが……」


 そうダンが抗議するも相手にされず、シャットとリラの二人はやいやいとランドルフたち相手に口論を始める。


 それらを他所に、ダンの船は西大陸の聖都へと到達した。



 * * *



 「おお、なんという……事前に船から景色はみて見てましたが、まさか本当にここまで崩壊しているとは……。あの美麗な聖都が……」


 降り立つや否や、聖都の惨状を見てランドルフは驚きと嘆きの声を上げる。


「これでもすぐに雨を降らせて消火しましたので、被害はマシな方だったと言えるでしょう。私が来るのがあと半日遅ければ完全な廃虚となっていたでしょうね」


「まさかあの栄華を極めた聖都が……」


「でもここ、私たちを奴隷にしてた連中の根城だったんでしょ? いい気味じゃない」


 呆然とするランドルフたちを他所に、シャットはあっけらかんとそう言う。


「気持ちは分かるが……あまり難民たちの前でそう言うことは言わないでくれ。彼らとて反省はしている。あまり過剰に責めてもお互い悪い方に行くだけだ」


「む……ダンがそう言うなら、そうするけど……」


 シャットは不満げにしながらも口を噤む。


 それを他所に、道に広がる瓦礫を避けながら中央の大聖堂付近に向かうと、そこでは避難民が火を囲み、炊事をしている所であった。


 その内の一人がダンの姿を認め声を上げる。


「おお……あなた様は……!」


「預言者様だ!」


「預言者様がお帰りになられたぞ!」


 ダンの姿を見て、避難民たちはにわかにざわめき立つ。


 そしてその騒ぎを掻き分けて、エリアスが奥から姿を現した。


「ああ、預言者様……! 良かった、このままでは食料が尽きてしまうかと……!」


「一週間後に戻ってくると言っただろう? 私はちゃんと約束は守る。この道を行った先に私の船があるから、後でそこから食料を降ろせばいい」


 ダンがそう告げると、避難民たちに安堵が広がると同時に、明るい歓声が上がる。


「良かった……! これでまだ生き延びれます。ところで、そちらの方々は……」


 エリアスは、後ろのランドルフたちを見ながら尋ねる。


「ああ、こちらは……東大陸にあるさる帝国の皇子様とその従者の方だ。今回この聖都の視察に同行してもらってな。後ろの二人の子供は私の連れだ」


「子供じゃないわよっ!」


 子供扱いされたことに腹を立てたのか、シャットがそう声を荒げる。


 それを他所に、ランドルフが前に出て名乗りを上げた。


「お初お目にかかる。貴君は聖職者殿かな? 我はアウストラシア帝国第三皇子ランドルフである。この度、聖都の惨状に胸を痛め、何か我にも出来ることがないかと首領殿に同行させて頂いた次第じゃ」


「これはこれは……私は元、聖教会の神官を務め、今はこちらの預言者ゾディアック様に仕えている、エリアスと申します。アウストラシア帝国と言えば、元は我らの分派である東方聖教会のある国。この聖都の有り様を見て、さぞや驚かれたことでしょう」


「さもあらん。最初首領殿に聞かされた時はまさかと思いましたが、実際にこの惨状を目にするとなんとも痛ましいものです。一体この地に何が起きたのですかな?」


 ランドルフがそう尋ねると、エリアスはため息混じりに答える。


「実は……教皇猊下以下、複数名の聖職者たちが聖都に反乱を起こしまして、各所に火を放って数多くの信徒を殺害してしまったのです。そちらの預言者様の手によってかの者たちは鎮圧され、なんとか火は収まりましたが……」


「なんと……して、教皇猊下たちは何処に?」


「ええ、あちらで瓦礫の撤去をさせていますよ。正直言って、皆が怒りをぶつけるのを止めるのに必死で……目に入らぬよう遠く離れた場所で作業させています」


「すまんな。折を見てここから連れ出しておくから、それまでは厄介だが面倒を見てやってくれ」


 ダンがそう言うと、エリアスは「預言者様のお言葉のままに」と頭を下げる。


 その光景を見て、ランドルフは口をあんぐりと開けながら、感嘆の声を上げる。


「ははあ……話には聞いておりましたが、本当に首領殿はここの指導者となっておられたのですね。東の端から西の端までひとっ飛びで行ける首領殿しか、このような飛び地を治めることは出来ぬでしょうな」


「指導者、というほど大層なものではありませんよ。私はただ避難民を支援しているだけですから」


「いえ、我ら聖都の民一同、偉大なる預言者ゾディアック様の下で教えを学んでいる最中であります。教皇猊下が既に廃人となってしまった今、この生まれ変わった聖都の主はゾディアック様で間違いありません」


 そう答えるエリアスに、ランドルフは興味深そうに目を輝かせる。


 ダンはそれに居心地悪く咳払いしたあと尋ねる。


「私がいない間に何か変わったことはあったか? 足りないものなどがあれば今のうちに言っておいた方が良いぞ」


「それでは……出来れば冬越しの薪を。今は崩れた廃墟の木材を切り崩してなんとか保たせておりますが、いずれ足りなくなることが明白です。その前にどうにか暖が取れるものを。それと、清潔な布と水も井戸が崩れて不足しています」


「うむ、分かった。水に関しては私が井戸を掘り返して対応しよう。布は私の船にある程度ストックがある。火傷に効く軟膏や消毒液もあるから、皆で使うといい。これから寒いだろうと思って、毛皮も持ってきている。皆に一枚ずつくらいはあるから、配ってくれて構わない」


「おお、神に感謝を……!」


 ダンがそう答えると、エリアスは顔の前で十字を切りながら手を合わせて祈るような姿勢を取る。


「薪に関しては……そうだな、何処かに農地に使えるような広い場所はないか? 石畳ではなく土の地面でないとダメだ」


「? それなら……教会の本部の裏には広い荘園がございます。今は焼け落ちて煤だらけになっておりますが、かつては果実などをそこで育てていました」


「うむ、ならそこがいい。案内してくれ」


「畏まりました」


 エリアスはあまり理解出来て居ないながらも、ダンに言われるがまま聖教会の奥の荘園へと案内する。


 高い塀に囲われた奥に向かうとそこには、今や焦げた灰や煤が積み上がった悲惨な場所だが、かつては美しく整えられていたであろう、広く手つかずの土地が広がっていた。


 灰に埋もれた地面も、いっそ栄養豊富で豊かな土壌の礎になるだろうと思われた。


「うむ、ここなら立派な木々が生えそうだ」


「は? しかし……今から木を生やすなど、薪として使えるのは一体いつになることか……」


「問題はない。明日にでも使えるようになるはずだ。私には時間を超える術があるからな」


「は、はあ……」


 そういまいち釈然としていないエリアスをその場に待たせたまま一旦船に戻り、ダンは創造主の筆(クリエイター・ツール)を持ち出す。


 いきなり大型の物々しい鈍器のような物を取り出したダンに、避難民たちもギョッとしてダンの後ろに着いてくる。


 やがてぞろぞろと野次馬を引き連れて荘園に戻ると、エリアスは目をぱちくりとさせながら言った。


「い、一体これから何をなさるおつもりですか? このように大勢引き連れて」


「私が連れてきた訳ではない。皆が勝手に着いてきただけだ。今からこの荘園に木を生やす」


「き、木を生やす??」


「首領殿、我には少し話の流れを理解し兼ねるのですが……今からここに種を蒔いて木を育てるということですか?」


 野次馬に混ざってランドルフがダンにそう尋ねる。


「いえ、そんな悠長なことはするつもりはありませんよ。まあそこで見ていて下さい。私が賜った本物の神の奇跡をご覧に入れます」


 ダンはそう冗談めかして言うと、創造主の筆(クリエイター・ツール)の端末を操作して、生やしたい植物を一覧から選択する。


 薪に最も適しているのはクヌギの木だろう。


 ダンは端末のホログラムから該当の木を見つけ出してそれを選択したあと、先端を地面に向ける。


 そして次の瞬間――


「うおおおお!?」


 創造主の筆(クリエイター・ツール)の先端から放たれた光の先の地面から、ニョキニョキと早回しのように木が生えてくる。


 それに一斉にざわめく大衆を尻目に、ダンは荘園の中に次々と木を生やしていく。


 あっという間に五十を超えるクヌギが生え揃い、荘園の肥沃な土壌から立派な太い幹の木が並んでいた。


「なっ……何が起こったんだ!?」


「き、木があっという間に……!」


「奇跡だ……」


 そう口々に呆然と呟く。


「皆の者、祈りなさい! これぞ神が地上にお示しになられた奇跡です!」


 そうエリアスが宣言すると、聖都の民たちは一斉にその場に膝を付いて祈りを捧げ始める。


「おいおい……不可思議な技とは言え、いくらなんでも崇めたりまでする必要はない。ただ薪になる木を出しただけだ」


「いやいや……! 首領殿、さすがに今のは慣れてきたと思っていた我も度肝を抜かれましたぞ。思わず我も膝を折りそうになったほどです! 一体今のは何をされたのですか!?」


 そうランドルフが興奮気味に尋ねる。


「実は……これは私がさる存在から託された遺物で、私ですら完全にその原理を理解することが出来ないのですよ。分かるのは、物質世界の遥か上位の世界から、何かの干渉をして、この世界に想像したものを実体化していると言うことぐらいですかね」


「おお、まさしくそれは、創造主様の創世の光! 本物の神の奇跡の顕現を、まさかこの目に見ることが出来るとは……!」


 エリアスなどは、もはや涙すらしながら両手を広げて声を上げる。


「想像したものを……ということは、何でも? ま、まさか金でも金剛石(ダイヤモンド)でもですか?」


「いえ、今のところは植物しか作れませんね。だけど植物なら、その土地に合ったものなら大抵は作ることができますよ」


 そのダンの答えに、ランドルフはホッと胸を撫で下ろす。


「そ、それは凄まじい力ですが……ホッとしました。まさか金や銀などの貴金属が簡単に作られるのでは、世界中の財政が大混乱に陥りますからな」


「ははは! まさかそんなこと」


 ダンは白々しくそう答える。


 最もこの創造主の筆(クリエイター・ツール)では金属は創れないものの、天の館(エアンナ)のブラックホール炉では合成することが出来る。


 これに関しては余計に混乱させるだけなので、黙っておこうと決意した。


「この木を切り倒せば、冬越しの薪などはいくらでも調達出来るだろう」


「そんな! 神の奇跡によって生やされた木を切るなど畏れ多いことです! それならば、木の一本一本に祈りを捧げ、この荘園を聖地として……」


「何を言っている。神の奇跡は地上の者たちを豊かにするためにもたらされるものだ。崇めさせるだけさせて、我慢を強いるだけでは本末転倒ではないか」


 そう呆れたように答える。


 ダンとしては、崇拝とかそんなのはいいからさっさと活用して欲しいところだ。


「君たちが出来ないなら私が切ろうじゃないか。少し離れていなさい」


「は、はは!」


 ダンがそう言って背中から刃渡り一メートルほどの高周波振動刃(ヴァイブロブレード)を取り出すと、エリアスたち避難民は恐れて後ろに下がる。


 そして、ダンは二本横に並んだクヌギを、一斉にスパッと横薙ぎで断ち切る。


 そのままズズン、と地響きを立てて倒れる木々を見て、背後からおお、と感嘆の声が上がる。


「一振りであんな太い木を二本も同時に断ち切るとは……首領殿は武にも秀でているのは話には聞いていましたが、いざ目にすると恐ろしいまでの剣の冴えですな」


「なに、ただ剣がいいだけですよ。これを使えば振り抜く際に力も必要ありませんから、木や枝を落とすなどする時に重宝しているんです」


 ダンはそう言いながら、刃を振るって次々とクヌギの木を切り払っていく。


 やがて全ての木を切り倒し、大量の丸太を作り出したあとに言った。


「これだけあれば十分に全員が冬を越すくらいの薪を作れるだろう」


「え、ええ。しかし、これはまだ乾いていないので、薪として使えるかどうか……」


「うむ、それも分かっている。それに関しては私が簡易の木材乾燥機を作ろう。それがあれば半日もすれば薪として使えるようになる」


 ダンはそう答える。


 仕組みとしては、船の格納庫に置いてある空のドラム缶内部に、マイクロ波照射装置と真空ポンプを取り付けて、その中に生の薪を入れて真空状態で乾燥させるつもりだ。


 水は真空状態なら沸点が大きく下がるので、小型のマイクロ波照射装置で少し暖めるだけで、上質に乾いた木材が出来上がるのだ。


 以前は高度一万メートルの成層圏で大木を乾かした経験があるが、これなら別に半宇宙空間まで行かずとも地上で誰でも低温で木材を乾かすことが出来る。


 木材のみならずドライフルーツや干物を作るにも重宝するので、今度量産して皆に配ってやろうと画策していた。


「さあ、今からこの丸太を細かい薪にしていくから手伝ってくれ」


 その後、ダンは避難民たちを集めて細かく指示を出しながら、着々と冬越しの準備を整えていった。

少し間が空きましたがまたぼちぼち上げていこうかと思います。お付き合い頂ければ幸いです。

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